野良の陰陽師少女♪

健野屋文乃(たけのやふみの)

第1話 式神くんの言い訳

吾は野良の陰陽師。通称【野良のあき】


野良なので貧乏です。

ゆえにボロいアパートの1階の管理人室に住んでます。


父は遠洋漁業で、地球のどこかで釣りをしてます。

母はトラックの運転手で、日本のどこかで荷物を運んでます。


なので吾は基本1人で、祖父母の残したボロアパートを守りつつ生活しています。


それでも、昼間は私立の女子小学校に通ってます。

小5になるとこです。


超お嬢様小学校なので、みんなお金持ちです。

なぜ貧乏な吾が、そんなお金持ちお嬢様小学校に通っているかと言うと、落ちぶれたのです。

ボロアパートを売ろうにも、買ってくれる人がいないという失望状態です。


はあ~世知辛い世の中です。


そんなお嬢様小学校に一緒に通う友達はいましたが、引き籠ってしまって、学校にはあんまり行きたくありません。



小銭を稼ぐためネットゲームの実況です。儲かりません。


最近、吾が実況をしていると、隣の二階から時々視線を感じる。



吾部屋のすぐ隣には、同じタイプのアパートがあって、そっちはほぼ空き家です。


ほぼ廃墟です。


吾の名の【あき】が、空き家の【あき】じゃないかと、想う始めている昨今(泣)


そんなところから見られているなんて、怖いです。

だからと言って、引っ越すお金もないし。


いるかいないかだけは、ハッキリさせたい。


ので、実況配信中に、カーテンを開けて、チラチラと伺ってみた。



チラ・・・チラ。



いた。今、目が合った。


5か6歳くらいの年齢の子どものような。



吾は家宝の名刀村正を手に、隣のアパートの2階に走った。

村正があれば大抵大丈夫だ。

村正は大袈裟かと思われるかも知れないが、物の怪の類だったら、村正は最適なのだ。


ボロアパートの階段を駆け上がり、その部屋のドアを開けた。


12か13くらいの年齢の少年がいた。


こいつは式神だ!


野良とは言え、それはすぐに分かった。


「なぜ吾の部屋を覗いていた!?」


陰陽師に対して式神を使うなど、敵対行為に等しい!


吾は村正の柄を掴んだ。


「待って!」


「今更!」


「ぼくは微風!ゆきの式神です」



ゆき。絶賛引き籠り中の吾の親友だ。


良く見ると、微風の顔はどことなくゆきの面影がある。


分霊型の式神だろう。所謂分身の術に近い。



「ゆきは、あきちゃんに、会いたくて、会いたくて、陰陽道を勉強してやっと式神を派遣することが出来たの。分身とは言え逢えて嬉しいよ」



ネットワークが世界中に広がった昨今。


ネットワークを利用すれば、幾らでも連絡は出来たのに。



「なぜそこまで遠回りをしたの?」


「だってメールとかドキドキするし、引き籠りで久しぶりだったし」



解る。とっても解る。


ネットで実況とかしているくせに、吾もものすごく臆病で人見知りなのだ。



ネットワークが世界中に広がった昨今。


どうして我々は、こんな面倒くさい事をしているのだろう?



吾は早速、吾の分身たる式神を、ゆきの元に派遣した。


数分後、分身たる式神を通じて、ゆきの歓喜が伝わってきた。



ネットワークが世界中に広がった昨今。


どうして我々は、こんな面倒くさい事をしているのだろう?




つづく




※この作品は『陰陽師少女・野良のはなもり♪』の設定変更した作品です。

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