第45話 「ハッピーエンド」

……ん……?

あっ……

広大に広がる宇宙空間。前に見えるのは渦巻き型の銀河。何億光年と先にあるのに、何故にこれほど透き通っていて、美しいのだろうか。

……広いな……フフッ……当たり前か。




「はっ……!」

目を覚ますとそこは、議員会館のベッドだった。

「ん?」

足元に何か乗っている。

「あっ!え……?」

秘書さんが私の足を枕にして寝ている。

「ん……?あ、加藤さんっ!」

聞きなれた声だ。でも、久しぶりな気がする。

「ようやく起きたんですかっ!全く、心配しましたよっ?」

「……それより、なんで足を枕に?」

「寝落ち、しましたっ!」

「あぁ……そうか…い?」

「加藤君!」

また聞きなれた声がする。今度はもっと久しぶりだ。

「加藤君加藤君!なーに寝てる場合ですか!」

山本議員がドアを開けて部屋に滑り込んできた。

「ひ、久しぶりだね……」

「なんでそんなに落ち込んでるんだよ!今日は最高の一日だ!」

満面の笑みを浮かべる山本議員。

「いや……別に……何でもないですよ」

「本当に?」

「いや……疲れただけですよ」

「そうか。確かにそうだな!」

とりあえず苦笑いでもしておこう。

「あの……聞きたいことがあって……」

「ん?なんだい?」

「今日は何日ですか?」


「何日って、9月4日だよ」


……

終わったんだ。全部。

「加藤君、良いニュースだ!来年度からできる“地底省”の大臣に総理が君を推薦するって!」

……そう…か……

「やったな!加藤!」

そう言って山本議員は私の肩を揺すった。

「加藤~!」

また誰か入ってきた。

「最高の気分だ!な!加藤!」

ヤコフだった。

「国連の奴ら、俺らに負けててんぱってやがる。SNSのお陰で世界中で大炎上だぜ」

「……勝ったんだね……」

「あぁ。ギリギリのところだったけどな」

「……最高…だね…」

……何があったかはわからないが、きっと手に汗握る戦闘になったんだろう。

正直、自分自身の記憶が曖昧になっている。何かモヤモヤした物があるが、“あんなこと”があったお陰で思い出せない。いや、思い出したくない。

「敵が霧から出てきてよ、誰も火炎瓶残ってないって言って。お前が『持ってるよ。一個』って言って戦車に火炎瓶投げつける瞬間。めちゃくちゃかっこよかったぜ。そんで敵が大炎上して諦めて……」

「あのさ…宮田は?」

「あぁ。宮田か。それがな……あいつ、地底で色々あったからって研究所に拘束状態だ。今頃いろんな人から質問責めされてるぜ」

「…あぁ…そう」

宮田はパーティーの一員じゃなかったのか……?

「でも、明後日には解放されるらしい。そうしたら、全員で星空見に山奥でキャンプだ」

そういえば、前にヤコフがそんなことを言っていたような。

「そういえば……地底人たちは……」

「おいおい、加藤。お前、記憶でもなくしちまったのか?」

「あ、あはは……」

「今頃、宴でも開いてどんちゃん騒ぎさ」

「そ、そうですよね!」

……

「……あぁ…何か加藤今日はテンションがおかしいな」

「まあ、昨日あんなに戦ったからね」

山本議員が割って入った。

「皆さんっ!記念撮影しましょうっ!」

「いいね!」「よっしゃ!」「うん…」

秘書さんはカメラを取り出し、机の上に置いた。

「これ、宮田さんに頼んで加藤さんが地底に持っていったときのカメラ借りてきたんですよっ!」

確かに見覚えがある。

「さーてと」

カメラのタイマーをセットすると、秘書さんは私の隣に座った。


「はいっチーズ!」

「チーズ!」「チーズっ!」「チーズゥ!」「…チーズ」


カシャッ


白い閃光が四人を包んだ。

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