異世界奴隷娼館

@Ybarbar

第1話 エピローグ

夜の闇に光を奪われていた街に店の灯りがポツポツと灯り、街を闊歩する人間が酒を含んだ者とそうでないのと半分半分ぐらいになったころ、ようやく王都エメリオンの夜が始まる。


ヴェルリア大陸一の大国ソルスティア


その王都エメリオン。


この都市は、様々な種族が共に生活し、交流する場として知られている。


煌めくエルフの住居が木々に彩りを添え、ドワーフの鍛冶屋の響きが響き渡る。繁華街では人間の商人が品物を売り歩き、翼を持つフェアリーが歌声を響かせている。


学問も充実しており大陸一の名門校と名高いフォースレイド学園では魔法や剣術のみならず錬金術、古代文明の研究、天文学、経済学など、ありとあらゆる学問の研究が盛んに行われており国内外問わず優れた人間達が学びにくる。


冒険者ギルドや商業ギルドも盛んであり、魔物の討伐やダンジョンの探索によって入手される貴重な素材やアイテムが商業ギルドの商人たちにとって日夜取引され日々とんでもない額で取引されている。


そんな栄光と欲望に満ちた都市。


そんな輝かしい都市の中でも一際、欲望と金が集まる場所がある。


この世の益荒男達からは「大陸の桃源郷」、一般人からは「大陸一淫らな場所」だの「大陸一精子が飛び交う場所」だのと揶揄されている場所。


歓楽街 “ウェストバル“


昼間は穏やかな静寂に包まれているこの場所は、日が落ちると魔法と男達の欲望が共鳴し全く違う姿を映し出す。


夜になるにつれ街灯がひとつずつ点火され、その光が歓楽街の闇を照らし出す。風が心地よく吹き抜け、街には優雅な音楽の響きが広がる。


店の扉が開き出すと街はさらに人々の喧騒と活気に包まれる。夜の美しさを追い求める人々が、歓楽街に集まってくるのだ。


そんな人間たちの欲望を満たすため様々な趣向の店が歓楽街には待ち構えている 。


一晩遊ぶだけで平民が一年過ごせるだけの金額が吹っ飛ぶような高級店だとか


王族や貴族の御用達の老舗の店だとか


没落した貴族の令嬢や大商人の娘を慰み者にできる店だとか


どこで集めたか分からないような見たこともない希少な種族ばかり集めた怪しい店だとか


そんな店達を中心にこの歓楽街は夜が進むにつれ興奮と情熱が高まり人々が日常を忘れ夢と現実が交錯する不思議な空間に浸る。


そんな夢の都市ウェストバルの一画。


高級店や人気店が聳え立つ大通りから少し離れた裏路地にある


娼館「奴隷の館」


その支配人が俺グレイリーウツである。


今は夕暮れ時もあっていそいそと開店準備に勤しんでいるがほんの数週間前まではこの歓楽街とは全くと言っていいほど無縁な生活をしていた。


ヴェルリア大陸とは別の小さな大陸で冒険者として日銭を稼ぎ酒を飲み女を抱くという享楽的な生活に興じていた。


そんな俺が何故この都市で支配人として働いているのか?


その理由は数週間前に遡る。

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