第26話 料理

 入学式は……省略するが色々あった。

校長の話が長いのは何処でも共通みたいだ……

5時間ぐらいあったんじゃないのかという錯覚に陥る。

とりあえず、その話は置いておこう。

今、俺は向と帰っている。

一緒に帰るのは何年ぶりだろうか……


「この後……何しようかな……」


俺はそんな事を呟いていた。入学式は午前中に終わり、午後からはやることが無いのだ。


「なんか無いの?趣味とか……」


無論、そんなものはない。

向と疎遠な関係になってからは人生をぼーっと生きていた為、作っていないのだ。

だがそんな事を面と向かって言えるわけもなく、俺は無い。と返した。


「じゃあさ、今から杜庵の家でゲームしない?昔みたいにさ。」


「良いな!それ。だが、昼食はどうするんだ?」


「一緒に作ろうよ!料理することが趣味になるかもしれないしさ!具材はある?」


「あぁ……あるにはあるが……良いのか?」


「私も料理したいしね。」


俺はこいつのこういう所に惚れたんだな……と再認識した。


 「で、家に着いたわけなんだが……俺の家ってこんなに狭かったっけ?」


「私から見たら広いと思うよ。」


「とりあえず、料理するか?」


「そうだね。」


「何を作るんだ?俺が料理をしたのは中学生の調理実習が最後だからあまり難しいのは作れないぞ。」


今までは、コンビニ弁当で何とか過ごしてきた。

本当にだらしないと思う。


「そこまで難しいものを作るつもりはないよ。冷蔵庫の中見ていい?」


「あぁ、良いぞ。」


あれ……俺って冷蔵庫の中整理してたっけ……


「あ〜、これなら、あれが作れそう。」


良かった……過去の俺はちゃんと整理してたみたいだ。


「あれって?」


「内緒。杜庵は私の指示通りに動いて。」


「分かった。」


そうして、料理が始まった。


「え〜と、まずは……杜庵、人参を切って。」


「人参を使うのか……これで何を作るのかが結構絞られたな。」


俺は包丁を持ち、人参を切り始めた。

久しぶりに包丁を持ったら手が震えてきた……人参ってこんなに切りにくかったっけ。

あっ!

俺は手を包丁で切ってしまった。

血がどんどんと出てくる。

向はまだ気づいて居ないみたいだ……

バレたら心配をかけてしまう……しょうがない。

能力を使うか……あまり使いたくないんだが。

能力というものの存在は中学2年生になってから初めて知った。所謂、覚醒だ。

能力が覚醒した事を皮切りに、俺は沢山の能力者に出会うようになった。

能力者に出会うごとに俺は強くなっていった。

能力を奪えるからだ。

そういう能力なのだ。

俺はその数ある能力の内、1つを使用した。

人前ではあまり使いたくなかったんだがな……仕方ないだろう。

みるみると傷口が塞がっていく。

傷が完治すると、俺は何事もなかったかのように人参を切り出した。

これも、能力を使えば簡単に切れるんだがな……

まぁ、それじゃあ料理を楽しめないか……

とそんな事を考えながら……




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