涼風杜庵と幸運な少女

第25話 幼馴染み

 高校生活と聞いて、何を思い浮かべるだろうか……

俺は青春を思い浮かべる。

これは、俺の人生が大きく変わるまでの青春だ。


 春、それは詩人っぽく言うと出会いと別れの季節。

誰かが卒業をし、誰かが入学をする……そんな永遠に繰り返される輪ができている。

俺は少し偏差値の高い高校に入学することにした。

何がしたいだとか将来の夢だとかそんな事は微塵も考えていない。

ただ、近かったから入っただけだ。

そんな希望でも絶望でもない事を考えながら歩いていると自分の教室の前に着いていた。


「ここか……ん?あれは!?なんでこんなところに居るんだ?」


俺は廊下に居たある人物を見た瞬間、驚愕した。

何故なら、もう会えないと思っていた幼馴染みに会えたからだ。

俺は運命を感じた。


「何か困ってるみたいだな。折角だし話しかけてみるか……」


中学の頃、あいつとは疎遠な関係になっていた。

急に話しかけてきた大丈夫だろうか……

そんな不安が脳裏によぎる。

だがここを逃したらもう2度とチャンスはないかもしれない。

俺は幼馴染みの傍まで来ていた。


「どうしたんだ?」


「えっ?!杜庵?なんでこの高校に?!」


「それはこっちが聞きたいんだが……それより、何か困ってるみたいだが……」


「ちょっと私の教室が分からなくて……」


「そうか。クラス表ならこっちにある。ついてこい。」


案外、話せるものだな……

と俺は思った。


「あ〜ここにあったんだ。気づかなかった。ありがとう。」


「いいよ……因みに何処のクラスだったんだ?」


「私は1年3組だったよ。」


「おぉ、奇遇だな、俺もだ。」


幼馴染みとの思わぬ再会を果たし、更には同じクラスときた。これは今年の運を使い果たしたかもしれない……


「じゃあ一緒に行こっか。」


「そうだな。」


俺達は自分のクラスに向かった。

そして、黒板に貼られていた座席表を確認し、座る。

出席番号順だ。


「お前が俺の前の席になるのか……」


「何か運命的なものを感じたね。」


「お前ってあまり昔と変わってないよな。」


「そう?私は変わってると思うけど……」


「まぁ、人によって感じ方は違うよな……そんなことより1つ疑問があるんだが……」


「えっ!なになに?」


「なんで俺の周りには女子しか居ないの?」


俺は自分の席の全方位を女子に囲まれていた。

羨ましいな……って思う奴も居ると思うんだが俺は違う。せめて1人は男子が欲しかった。


「まぁ、なんていうか……ドンマイ。」


「はぁ……まぁ良いか……」


こうして、俺の高校生活が幕を上げた。






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