第13話 入れ替え

 翌朝、“俺”は学校に来ていた。

あの後、こっちの世界の俺は俺に


「お前が僕の代わりに学校に行って来てくれないか?」


と言ってきたのだ。

俺はこっちの世界の学校のことが気になっていたのでその願いを了承した。


「おはよう。杜庵。」


靴箱で靴を履き替えていたら突然、後ろから声をかけられた。

俺は振り返る。

誰だ?俺はそう思った。

こっちの俺からは学校には星空瞳と神名香菜という友達がいると教えられたが、その友達の特徴などは教えられなかった。

俺は聞けば良かった。と後悔した。

まぁとりあえず挨拶を返すか……


「おはよう。」


「知ってた?杜庵。今日は3時間目に体育があるんだよ!私、体育嫌いだから嫌だな~」


「そうか。」


俺はなるべく話が続かないように返事をした。

俺の今日のミッションはバレずに学校を終えることだ。おしゃべりをすることじゃない。

今、教えてもらった自分の教室に向かっているが学校の内装は向こうの世界とさほど変わらないようだ。

この調子だったら多分授業もあまり変わらないんだろうな……

隣の奴が凄く話かけてくるが俺は全て適当に返す。

後少しで教室に着くってところで隣の奴に核心をつくような質問をしてきた。


「なんか今日の杜庵冷たくない?」


「そそそそんなことないけど……」


正直に言おう。

俺は物凄く動揺していた。


「なんか動揺してない?もしかして……私のこと、嫌いになった?」


「いや、“俺”がお前のことを嫌いになることは無い。」


しまった!間違えて一人称を“俺”にしてしまった!

こっちの俺の一人称は“僕”だ!頼む……気付かないでくれ……

俺のそんな願いも虚しく、奴はそのことに気付いた。


「“俺”?杜庵の一人称は“僕”じゃなかったっけ?それにさっきの動揺……もしかして!偽物?」


俺は初対面の人に嘘をつくのがとてつもなく苦手だ。だからこのまま隠し通すのは不可能だろう。

俺は正直に言うことにした。


「あぁ実はな…………」



 「えぇ!そんなことがあったの?!じゃあ貴方は杜庵じゃないの?!」


「いや、俺は涼風杜庵だ。ただ、別の世界から来ただけであって“ほぼ同じ”だ。」


「なんか、ややこしいね……じゃあこっちの世界の杜庵はどうしてるの?」


「あいつは……家にいるよ。」


あいつは友達には僕が怪我をしていることを言うな。面倒くさいことになる。と言っていたので怪我をしていることは言わなかった。


「じゃあ、家に行って良い?」


「はぁ?!なんでそうなったんだ?!」


「私が杜庵の家に行きたいから!」


「ダメだ!絶対にダメだ!」


そんなことを言い合っていると、隣から少女が出てきた。


「えっ!杜庵さんの家に行くなら私も行きます!」


「貴方は誰?私が先に杜庵の家に行くの!」


「いやいや、私が先です!」


「杜庵さんはどっちが良いですか?!」


「だ〜!!もう2人とも来いよ!!」


こっちの世界の俺には申し訳ないがなんとかしてもらおう。


「なんかこの子と一緒に行くのは気に食わないけどまぁ良いか。じゃあ放課後ね。」


あぁ、絶対に放課後が来て欲しくない。

俺はそんな叶いもしないことを思うのだった。










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