第4話 災難?

 暫くすると瞳達が帰ってきた。一体何を話ていたんだ?と聞いてみようとしたがやめた。わざわざこの部屋から出て話してたんだ。きっと簡単には教えてくれないだろう。

恐らくは仕事の話だと思うが……

僕は正直ここにいるのが申し訳なくなってきた。

何故なら舞香達の仕事の邪魔をしているんじゃないかと思ってきたからだ。

そこで僕は1つお願いをした。


「もう帰っていいか?」


「だめだよ!まだお礼ができてない!」


しかし、断られてしまった。


「じゃあ早くお礼をしてくれないか?」


随分と図々しい言い方になってしまったがこうでもしないと話が進まないだろう。


「うん。ちょっと待って。舞香、いつものあれやって。」


「承知しました。」


舞香がそういった瞬間、僕達は知らない部屋に来ていた。


「何が起こったんだ!?」


「言い忘れてたけど舞香も能力を持ってるの。」


「そうか。瞬間移動の能力か?」


僕はすぐに冷静を取り戻して言った。


「違います。私の能力は“記憶を操る能力”です。私は杜庵さんの玄関からここまで移動してきたという記憶を消したのです。だから瞬間移動してきたという訳ではありません。」


「へ〜工夫すれば色んなところに使えるな。」


「そうですね。実際にこの部屋にも能力を使っています。部屋が汚れたという“物の記憶”も消せるのでいつも綺麗です。」


「そんなに軽々と自分の能力の説明をして良いのか?」


「もし杜庵さんが私と戦うと言うなら記憶を消せば済む話ですしね。」


つまり僕は既に舞香の手中の中って言う事か……


「なぁ、そろそろ夕食の時間なんだが……」


時刻は既に18時をまわっていた。

ここから僕の家までは結構遠いので速く帰りたいところだ。


「夕食?そうだ!ここで食べていきなよ!それがお礼にもなるしさ。」


この口ぶりからして恐らくお礼の内容を決めてなかったらしい。

僕は事前に決めとけよと思った。

それにしても夕食か……

まぁ少し申し訳ないが食べて帰る事にしよう。


「そうだな……食べて行くことにするよ。」


「そうと決まれば舞香!夕食の準備してきて!」


「はい。承知しました。」


「なぁ、食事も舞香が作ってくれているのか?」


「うん。本当に完璧なメイドだよね。」


「そうだな。」


そして沈黙が流れる。

今、部屋には2人きりだ。

特に話す話題もなくただ気まずい時間が過ぎていく。

瞳も気まずいと感じているのだろうか……

僕はそんな事を考えながら気まずい時間を過ごすのだった。


 どうしよう……せっかく杜庵と2人きりになれたのに何か恥ずかしくて声が出ない。

さっきだってギリギリ杜庵の質問に返答できたのだ。

嗚呼、駄目だな私ってこれも恐らく舞香が気を使って作ってくれた機会だろう。それなのに何もできないって……

そんなネガティブな感情が私の頭を支配していって、そうなるともう止まらなくて、私は、私は、どうしたら良いのだろう。



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