第2話 21時にあわただしい。

 さすがに21時近くなるとウメキヨもその隣のスーパーも閑散としている。それでもちらほら客はくるんだから、遅い時間までやってくれているってありがたいよな。


 ということでウメキヨに到着。検査薬は置いてあるかしらと探したら、薬が並ぶコーナーにちゃんとあった。

 鼻に突っ込むタイプと唾液で検査するタイプとあるのか……と眺めていると、閉店準備をしていたらしい男性店員さんが声をかけてくる。


「すいません、薬剤師がいないので、それは売れないんですよ」

「あ、そうなんですか。薬剤師さんいない日でしたか」


 いる日に来店することがそもそもないから、いつきているかの把握もしてないしね、こっちは。

 しかし店員さんに声をかけてもらえたのはありがたかった。さっそく事情を説明する。


「夫が出張から、このあと帰ってくるんですけどね。熱が38度あるっていうんですよ。ご時世的にコロナに罹っちゃったのかなぁと思うんですよね」

「あー……なるほどです」


 さすがに社員旅行とは言いづらく『出張』と言ったけど、店員さん「お察し」という感じでうなずいてくれる。


「なんで、とりあえず熱冷ましとかだけでも欲しくて……あれ、コロナだった場合ってなにがいいんでしたっけ? イブプロフェンでしたっけ?」

「あー、いえ、今はアセトアミノフェンが主流になっていて、こっちですね」


 薬が並ぶ棚に案内してくれて、ウメキヨブランドの解熱剤を渡される。


「今はこっちなのね。ありがとう」

「喉の痛みとかあればこういう薬とか、あとはトローチとかもありまして」

「トローチ! それいただいていきます。あと消毒液とかってどの辺にあります?」

「こちらです」


 おばさん的なぐいぐいパワー全開で、店員さんに次々聞いて案内させる佐倉紫35歳。

 若い頃はなんでも店員さんに聞くのを恥ずかしいと思っていたけど、年齢が上がるにつれてこの手の羞恥心ってどうでもいいものになっていくわ。聞くほうが断然早いし、正しい情報を得られるんだもん。


「これが消毒ね。ありがとう。んー、とりあえずこんなもんかなぁ……。あとはゼリー飲料とか買っておくか。いろいろ教えてくれてありがとうございました」

「いいえ。ええと……コロナ以外の熱もはやっていますから。まぁ、お大事にしてください」


 励ましをありがとう店員さん。でも行ってきた先が沖縄だからさ。まぁコロナ以外のなんでもないと思うよ。うふふ。


 コロナって奴ぁ、とにかく喉の痛みがひどくなってものを飲み込めないと聞くから、ゼリー飲料も買い込む。ゼリータイプの経口補水液も。それと寝るときに少しでも乾燥を防げるように、潤いタイプの濡れマスクも買い込んだ。


「とりあえずこんなもんかな……。あと体温計を買っておこう。家にあるやつ壊れかけているから、どのみち買わないといけなかったし」


 家用の新しいのと、夫が使うので二つ買っておく。


「こんなもんかな……。まだ買い忘れがあるような気もするんだけど、うーん、とっさのことだけに、なにを買えばいいのかよくわからん」


 ひとまずお会計をして、荷物を背負って家に帰る。


 本来なら夫の隔離部屋を作るべきなんだけど、この時点で22時過ぎ。

 もう子供たちを寝かさないといけない時間だ。今から家具を動かして布団をどうこう……というのはちょっと難しい。バタバタしちゃうなら近所迷惑だし。


「夫氏が帰ってくるのも夜中の2時とか3時だしなぁ……。今夜は外で寝るとも言っているし……隔離部屋を作るのは明日にすべきか」


 とにかく子供たちの寝かしつけだ。いつも21時には寝かしつけ体勢に入るのにもう22時だよ。

 コロナに罹らないために重要なことはいろいろあるけど、早寝早起きと三食しっかり食べて免疫力を確保し、健康でいることも大切!

 ということですぐに寝かしつけじゃい。

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