その後

 お姉ちゃんと再会して1年が経った。

 新しく入社した会社ではそれなりに上手くやれているつもりだ。


「お疲れ様でした!」

「おう……今日は早いんだな……」

「はい! 大事な用事があるので!」

「そうか……気を付けて帰れよ……」

「ありがとうございます! それでは!」


 課長は物静かだが、とても親切で良い人だ。

 この人の下で働けるのを光栄に思えるほどだ。

 

 俺は会社から出るとスマホで自宅へ電話を掛ける。

 数回のコール音の後、とてつもなく美しい声がスマホから漏れ出てきた。


「もしもーし……?」

「あ、お姉ちゃん……今から帰るから……」

「ふふっ……待ってるね……」

「うん……すぐ帰るから待ってて……」


 電話を切り、寄り道をしながら近くの駅へ移動する。

 そして、自宅付近の駅に到着する電車へ乗り込む。


 俺は幸せだ。

 やりがいのある仕事に疲れて家へ帰れば、最愛の人が居る。


「ただいま……」

「おかえりなさぁい……」


 赤いエプロンに身を包み、台所で夕飯の支度をしていたお姉ちゃんは和かに微笑む。

 俺は駆け寄ってきたお姉ちゃんを優しく抱き締めた。


「ふふっ……どうしたの……?」

「昔のことを思い出してさ……」

「奇遇だね……私も……」

「あ、ケーキ買ってきたよ……」

「くふふ……ありがと……」


 お姉ちゃんの好物であるモンブランが入った小綺麗な箱を手渡す。

 お姉ちゃんはそれを受け取ると、嬉しそうに冷蔵庫へ保存する。


「もう少しでご飯出来るから待っててね……」

「うん……」


 今日はお姉ちゃんとの結婚1周年記念日だ。

 あの出来事からもう1年が経ったのかと懐かしい気持ちに駆られた。


「安谷って旅館あるんだ……」


 スマホの画面に映る安谷の観光情報が視界に飛び込んできた。

 レビューを見た感じではかなり評判が良い旅館らしい。


「えぇ……女将さんが1人で経営してるのよ……滝乃淵たきのふちっていう旅館……」

「へぇ……今度の休みに行ってみる……?」

「うん……行きたい……」

「決まりだね……予約しとくよ……」

「うん……お願い……」


 俺は無数に並ぶレビューを何気に眺めていた。

 そんなレビューの中でとあるレビュー達が俺の視界に入る。


『女将さんの接客は良いのですが、お手伝いの娘さんの態度が最悪です。』

『手伝わせるならもっと愛想の良い人のほうが良いのでは?』


 何だか無茶苦茶怒られている。大丈夫だろうか。

 しかし、行かずに決め付けるのは良くない。


「いやぁ……楽しみだなぁ……」

「そうねぇ……」


 滝乃淵。

 一体どのような旅館なのだろうか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき


 これにて2人の物語は終了です!


 次回は謎に包まれた旅館を舞台にした話を書こうと思っていますので、応援よろしくお願いします!


 レビューを書いてくださった方、ハートや★を付けてくださった皆様方、最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

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田舎で初恋の鬼娘さんに癒される話 田舎の人 @inaka0313

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