第5話 平家の隠れ里とモンゴル弓


 正太郎からの話を聞き、衝撃を受けるも、父として、当主としていずれ嫡子なれば伝えなければならぬ話であるとして語る父。



 「正太郎よ、これからは話す内容はそちが立派な武士として那須家を背負う時に当主から次の当主へ伝える話であるが、平家の里についてはいずれ知っておく事ゆえ、伝えておく」



 「那須家の祖である与一様の話であるが、源氏と平氏の戦いで与一様が放った矢が平氏の扇の的を射抜いた話はよく知っておるな ?」



 「はい、父上様からも重臣の皆々様からもお聞きしております」




 「うむ、源氏と平家の戦いで天下一の弓士として名を広めた与一様はその後朝廷に呼ばれ帝にも拝謁しお言葉を頂き、源氏の棟梁様である源頼朝様からも特別に領地を頂くなどし、源氏の武威を天下に示したのが与一様である」




 「その一方で源氏が勝つ前は平氏一門の天下であり、朝廷を支えていたのも平氏である、戦いで敗れた平氏の一門は源氏の武士達に次から次と討たれていったのである、逃げても、逃げても次から次へと討たれ、それはもう余りにも哀れな滅亡であったと、そんな中、帝の一門でこれまで朝廷を支えていた平氏一門の姿見てを哀れに思い、ある平氏の方達を密かに庇護していたのだ」



 「その朝廷より密かに与一様に庇護している平氏一門を助けて欲しいと密命を受けたのだ。密命を受け、戦が止み、暫くして与一様が庇護していた平氏の一門を引き取り、那須家の家紋を掲げ、平家の者たちと怪しまれないように当時は那須家の領地であった塩原郷の奥地の又奥地に連れて行き安心して暮らせるようにその地へ案内したのだ」



 「この事は源氏から見れば裏切りとして見られる事でもあるが、朝廷からのたっての密命であり、決して公に出来ない那須家が背負う当主から当主へ伝える相伝の話なのだ」



 「故に年に一、二度その平家の里に使いを出し、様子を確認しているだけであり、あまりにも奥地であり僻地のため年貢なども求めておらず現在に至っているのだ」



 「まさか正太郎から平家の里の話を聞くとはおもわなんだ、一体お主に何が起きたのか、小さき身で苦しんだであろう、しかし、お主もいづれ儂の後を継ぐ那須家当主である、それにしても此度の事、何らかの手をうつしかあるまいなー」




 わかりやすく説明をしてくれた父上に正太郎は。



 「私の話をお聞きいただきありがとうございました」



 と拝礼し、さらに父上に。



 「出来ましたら私にその平家の里に行かせてください、平家の里を訪ね、鞍馬の子孫を訪ねよとの、話でした、そこに秘密があるのだと思います、また私に家臣を付けて下さい、それとまつりごとを学ぶために村を1つ下さりませ、頭の中の者が農業に詳しいようで勝手にやり方が私に伝わるのです、本当なのかどうなのか試してみたく存じます」




 「そこまで言うのなら、この際、確かな者を家臣とし、従者を数人連れて時期を見て平家の里へ訪ねてみよ、家臣については、そうだ芦野忠義が良いな、待っておれ、だれか芦野忠義を呼べ、忠義を呼べ」




控えていた小姓が急ぎ近くにいた小者に伝え、御屋形様がお呼びあると急ぎ伝え呼ぶようにと手配し、暫くすると芦野忠義が頭を下げ。


「御屋形様 お呼びでしょうか」




 「うむ、お前も知っての通り正太郎が五才となり、これより弓も騎乗もこなせる若武者に成長してもらわねばならぬ、また政についても何か考えがあるようで、その方をこれより正太郎の従臣として申し付ける、よろしいな」



 「はっ、身に余る光栄、芦野忠義これより若様のために身命を賭して従臣してまいります。若様よろしくお願い申し上げ致します」



 「まだ幼い故、手助けしてもらう事多々あるがこちらこそよろしくお願い申す」



 「正太郎よ、村については後日知らせる故沙汰を待つように、また弓についても探さなくてはならぬ故暫く待つように」




 「父上この度は大変にありがとうございました」

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