第4話 正太郎と父上

 いよいよ戦国時代の那須家の話に移行します、那須家20代当主 那須資胤すけたねと嫡子 正太郎(史実では太郎又は弥太郎と呼ばれていたようです。)作中はオリジナル作品なので正太郎で書きますのでご理解ください。



間もなく五才になる那須正太郎はここ最近気になる事があるので父である、那須家20代当主 那須資胤に相談する機会を考えていた、那須家では満5歳になるとお祝いとして弓と那須駒を頂ける。



 弓は那須家において必ず習得する必須の事であり、乗馬は武士として当然の事柄である、那須駒は那須山を中心に湯本から広い裾野一帯に野生の馬、那須駒と呼ばれている馬が群棲している、那須与一が乗っていた愛馬 鵜黒も那須駒である、那須駒の特徴は色が黒く高低差のある那須山一帯で育つ環境のため足腰が強く、平地で飼われている馬より屈強である為性格も強く勇ましい馬だと言われている。



 五才になれば嫡子である正太郎(後の資晴すけはる)に弓と那須駒が与えられるのである、この時に父 資胤に気になる事を相談しようと考えたのである、弓は子供用の大きさであり、馬も仔馬である。



 当日は那須温泉神社の神主が神事としてお祝いの詔を発し、当主である父 資胤と母と親族他重臣たちによってお祝いの品として弓と仔馬が与えられた。


 翌日朝餉を終え父がいる私室に向かい声をかけた正太郎である。



 「父上、正太郎です、相談したことあります、少しよろしいでしょうか?」 


 「うむ、よいぞ」



 入れとの父からの返事、室内に入り父の正面に座り拝礼し、昨日は五才のお祝いで弓と馬を頂けた事を感謝しお礼を述べる正太郎、挨拶を聞き微笑みながら父 資胤。



「これからは体を鍛え那須家の嫡子としての自覚を持ち精進するのだぞ」


と呼びかける父であった。


 そして今は親子二人だけの室内、そこには普通の父親と子であり、その幼い子供からの相談であれば父親としてどんな事でも聞き入れたいとの思いだけである。



 「ありがとうございます、では父上相談ごととは、・・・・なのです」



 その内容に驚きと衝撃を受ける父であった、五才の子がまして我が子が語る内容に全身の毛穴から汗が滲み出る驚愕の内容であった。




 正太郎が話した内容は、五才に近づくにつれて時々頭の中で別の何者かが、那須家の将来について知った知識とこれから起きるであろう事柄など、解決すべき問題点なとが、千切れ千切れの言葉、いや伝心とも言うべき形で語られたというのである、語り掛ける者は決して正太郎に向かって語り掛けているのか定かでは無いが、その者が考えて心の中で思考している事が部分部分ではあるが勝手に正太郎の頭の中に時々伝わって来るというである。



 最初こそ、その内容は理解できなかったが、何回か同じ様な事が起き、聞いている内に那須家にとって良からぬ話であり、とても大切な事が自分の中で起きているのではないかと、これは当主である父に打ち明けて解決する以外にないと幼い身ではあるが意を決して相談したのである。



 「父上、私は幼い身でありますが、那須家の将来を案じて父上にお話し申し上げております」



 息子の様子が子供なりに真剣に話そうとする姿に父資胤も那須家当主として、安心しては話すがよいと伝え、父としても姿勢を正しその言葉を聞くのであった。



 しかしその話とは衝撃であり正常を保つことが出来ないほどの恐ろしいものであったのだ。



 「父上、最近私の頭の中で別の何者かが、那須家が危ない、このままでは他国に侵略され数十年で没落すると、時々その者が考えている内容が私に伝わるのです」



 突如、考えてもいなかった那須家の将来について、五才の子供から我が息子が語りはじめ、一気に室内が冷気に包まれ、静寂の中、語る正太郎。




 「頭の中でその者が考えている内容がとても大切な事なのではないか、このままでは大好きな父上と母様、そしてじじ様たち、大切な家臣たちはどうなってしまうのか、不安で怖くなり父上に相談しました」




 「その者が語る中で、平家の里にいる鞍馬の子孫を訪ねよ、そして蒙古襲来時に使っていた弓が那須家の蔵の中にあるからその弓を使えと、他にもいろいろとその者が考えている事が私の頭の中に伝わるのですが、まだ私が幼く知識無いために説明できないのですが、ただ事ではない事が起きているので父上に相談させていただきました」



 話を聞き終え、これは聞き捨てならぬ不思議な話である、当主であるわしが全身から汗を噴き出し、衝撃を受けておる、確かに那須家当主であれば、ごく限られた者だけが知っている平家の里に及ぶ秘事、我が先祖が蒙古襲来の折に蒙古兵が使用していた変わった弓が蔵の中にあることも聞き及んでいる、が、しかし、そもそも儂ですら、その弓を見たことは無い、なのに何故五才になったばかりの正太郎が知っているのか、これは・・これは・・・正太郎の話した事は・・・我が息子正太郎に一体何が起きたのか、今は、当主としてどうすべきなのか、どう語りかけるべきなのか・・・




 「正太郎よ、その何者かから伝わった内容は、平家の里を訪ね鞍馬の子孫を訪ねよ、という事と蒙古襲来で蒙古兵が使用していた弓を使えとの内容だったのだな・・・」



 「はい父上、その通りです」



 そこには考え込む父の姿が・・・・・




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る