第15話:再臨


 戦場にこだまする叫び声がセラ達に再び緊張感を齎す。

 セラ、アイン、ミヤビは互いに顔を見合わせる。 

 そしてアークを起動させた。

 戦地に光の翼が舞う。

 

「何か来る!?」


 直感によるアインの警告と共に大気を切り裂く鋭い音が響き渡る。

 リューネとカイが探索に向かった方向から近づいてくるその音。

 顔に汗が伝う。

 そして。


ドガンっ


 空を飛んできたソレはセラ達の居る後方の瓦礫に鼓膜が割れんばかりの爆発音を放ちぶつかる。

 周囲に在った残骸は吹き飛びソレが衝突した瓦礫にはクレーターのような凹みが出来ていた。


「み、見に行こう」


「「(コクンっ)」」


 セラの声に無言で頷く二人。

 この場を支配する緊張感。

 彼らが踏み抜く瓦礫が潰れ、崩れる音がやけに大きく聞こえる。

 

 飛んできたソレの元まで左程時間はかからなかった。

 だが、その中でも彼らの感じる時間は永遠に等しものである。

 セラ達が考える可能性はどれも最悪なものであったからだ。

 0の脅威の復活。戦闘により飛んだ瓦礫の流れ玉。それとも…

 

 その姿が露となる。

 瞬間、血相を変えたセラがソレの元へ駆けた。


「リューネ!しっかり!!」


 大気を切り裂き飛んできたのはリューネであった。

 その身体はボロボロになり、その至るとこにある傷から流血があった。

 そして権能で限界を迎えたのか彼の眼は赤く染まっていた。


「セ、セラか…俺は大丈夫、はぁはぁ、この傷も半分は受け身のために自分でやったから…」

(衝突の間際にエネルギーをさせて無かった本当に危なかった…)


 息を切らしながら何とか言葉を紡ぐリューネだった。

 大丈夫とは言っているが説得力はそこにない。

 リューネに息があり、胸を撫で下ろすセラ。

 

「バカ!安心なんかしてんじゃねぇ!ゴホッゴホッ……や、がくる!」


 息が乱れる中、声を張ったリューネに驚きながらも三人は現実に戻る。

 すると何かの大きなプロペラが回っているかのような音が段々と近づいていることに気付いた。

 音の方向はリューネが飛んできた方向。

 リューネが発した「奴がくる」の単語が彼らの頭を埋め尽くす。


「セラ、気を抜くなよ」


「分かってるってアイン」


 絶望の音が近づいてくる。

 その音の主に関して三人は覚悟を決めていた。 

 姿が瓦礫を越え顔を見せる。


「え?」


 思わずセラが声を漏らす。

 姿

 甲虫のような装甲は無く、芋虫のような身体に片方が折れた漆黒の鎌。

 身体に見合わないほど大きくなった羽。 

 その折れた鎌の先には奴の身体以上に大きな何かがぶら下っていた。


「「カイ!!」」


 リューネと共に探索に向かったカイが鎌に引っかかる形でぶら下っていた。

 よく見ると僅かに身体を揺らし逃れようとしているのが分かる。死んでは無いよう だ。

 しかし、彼の右足は膝下から

 それ以外にも身体に多くの傷があり、出血が激しいのが見て分かる。

 時間は残されていない。

 三人は瓦礫を深く踏みしめる。


「き、気を付けろ…さっきより断然……早い!」


 瓦礫に身を預けるリューネが三人の背に言葉を飛ばす。

 三人はその声を噛みしめるように拳を強く握りしめた。


「行くぞ!セラ!ミヤビ!」


「あぁ!」「うん!」


 地に軌跡を残し三人は散る。

 ミヤビは空へ。

 セラとアインは瓦礫を駆ける。

 喋らずとも彼らの目標は決まってる。

 仲間の救出だ。


 姿の変わった奴の出方を窺う。

 しかし、動かない。

 その黒き身体に光る眼から意図など汲み取ることはできない。

 空も飛ぶミヤビが仕掛ける。

 翼を形成する光と同じもので創造された身の丈ほどの銃を構える。

 銃口がその姿を捉えた。


「カイ、待ってて…」


 引き金に指をかける。

 狙うは漆黒の鎌の根本。

 鎌さえ吹き飛ばしてしまえば下で二人が拾ってくれるはずという算段。

 それに、動かない今なら確実に。


 その時。


「うそ!?」


 残像を残すことなく黒い奴は

 

 

 

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廻る世界の編纂記 のーこ @n-ko75no-ko

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