絶奏Ⅳ:「ユニットリーダー(分隊長)は氷の女王。そして変貌への導き――」

 場所は、先の香故と中隊長等の元へと戻る。

 戦場のただ中に身を置く彼等、彼女等。その真上をまたUAVが切り裂く音と同時に飛び抜ける。そして直後、香故等と相対、あるいは囲っていたオブスタクル達が、爆炎に包まれた。

 それはUAVから放たれた対戦車ミサイルによるもの。

 そしてオブスタクルは例外なく、その身を大きく損傷させ、その果てに煙のように掻き消えてゆく。


「こんな、いとも容易く……ッ」


 その光景を前に、思わず言葉を零すは中隊長。

 本来オブスタクルは、生半可な火力攻撃ではものともしない、強靭な体、生命力を持つ。その証拠に、先にはUAVの放った最初のミサイル攻撃を受けても、ケロリとした様子を見せていた。そんなオブスタクル達が、今は一転して火力の前に容易く崩れていく理由。

 それは先までは無かった、ある一つの変化。現象。

 そう――歌声。

 参上した香故等の、その声により奏でられ始めた歌声だ。


「やっぱり……〝フォース パフォーマー〟……っ!」

「噂には聞いていたが……彼等……彼女等がそうだと……?」


 優雅なまでに目の前で立ち構える香故の姿を、その背を見つつ。

 二尉はどこか高揚した声でまたそんな名称を口にし、中隊長も続け少し驚く色で発する。



 未知の敵――オブスタクル。

 その正体は未だ多くが謎に包まれているが、ある一つの事柄を人類は掴んでいた。

 それは、オブスタクルの弱点。破格の脅威を有する人類の敵を、無力化する一つの方法。

 ――歌声だ。

 原理、理屈に至っては未だにまったく不明だが、人の歌声はオブスタクル力を、そして戦意を喪失させ、さらにはその強靭な体を非常に脆く変質させる特性を持っていたのだ。


 しかしさらに。そこには一つの条件、法則が存在した。

 それは、歌声を奏でる者が――〝男性の心と、女性の身体を併せ持つ者〟である事。すなわち、女性に姿身体に身を変化させる事のできる男性――性転換、女体化を可能とする者である事だ。

 言ってしまえば荒唐無稽。この世の法則からしてあり得ない、どうしようもない事。

 しかし――オブスタクルの出現から間もない頃に、それは現実となった。

 ある日を境に、日本――いや世界で。女性の身体に性転換が可能となる体質、特性を発現した男性が、発見、報告され出したのだ。

 そして同時に、彼等――彼女等の心には、本能を揺さぶり訴える感情が、衝動が生まれる。

 それが、歌声をもって戦う事――人類の敵、オブスタクルに立ち向かう事であった。


 それから、いくつもの事態や事件の末に、人類は性転換者の歌声が――男性の力強い心を、信念を。女性の麗しい歌声に乗せて未知の敵にぶつける事。

それがオブスタクル撃退の要である事を理解。

 その力をもって、オブスタクルに立ち向かう事となった。


 日本でも手探りながらもいくつかの施策が立案され、性転換体質の発現者から有志が募られ、オブスタクルに立ち向かうための組織が立ち上げられる。

 その内の一つが、陸上任務隊の隊員の内にも現れた、性転換体質を発現した男性隊員の中から有志を募り、編成された特別任務部隊。



 ――〝絶奏音楽作選隊〟、《Absolute Music Strategy Unit》。



 抗障害音楽任務ユニット、通称――〝フォース パフォーマー〟だ。



 陸上総隊の直下に設置され、陸上任務隊内の各隊から募られた性転換体質者の隊員の内より、特に〝特性〟――その歌声がオブスタクルに及ぼす効果影響が、高く秀でる者を厳選し編成された。

そして音楽科音楽隊始め、各隊からの教育監修の元に立ち上がり体を成し、活動、任務を意開始。

 初陣よりその成果は驚異的なまでのものを見せ、戦略戦術的価値は見事に立証される。そして数々の戦果成果を上げるにつれ、その存在は世間にも認知され注目を集めた。

 歌声を持って戦う彼等――彼女等は世間に目にはまるでアイドルのように映った。

そして陸上任務隊とフォース パフォーマー側も、国民からの理解と国民へ安心感を与える必要性等の観点から、広報任務の一環として戦闘任務以外の場でもライブ活動等を精力的に開催実施。

 いつしか、フォース パフォーマーは戦うアイドルユニット――防衛アイドルユニットとして、受け入れられるようになった。



 香故は――今はまるで氷の女王とでも表現すべき、麗しい姿でしかし冷たいオーラを漂わせる彼、いや彼女は。

 その絶奏音楽作選隊、フォース パフォーマーの所属隊員であり。そして実働分隊の分隊長――ユニットリーダーでもあった。


「――――――……」


 その香故が紡ぎ奏でていた歌声が、静かに儚げに終わりを告げる。

 そして上空を旋回するUAVから流れ聞こえていた曲が、後奏を奏でた後に止む。歌われ響いていた一曲が、それをもって終わりとなったのだ。

 歌声と曲が止み、一帯周辺からは他のメンバーの継続する戦闘の音や、UAVの飛行音。その他の音が変わって主張し始める。


「――ご無事で?」


 そんな中。

 香故は背後の中隊長と二尉に振り向き、淡々とした声色でそんな一言を寄こした。


「あぁ、失礼。絶奏音楽作選隊、迎遊撃戦闘隊の香故二曹です」


 続け香故は、思い出し適当に付け加えるように。自らの所属性階級を雑な敬礼に合わせて、少し不躾な様子でする。


「遅くなり失礼を。よく持ちこたえていただけました」


 そして、どこかまた淡々とした様子で、そんな中隊長等の奮闘を評す言葉を寄こすと。振り向いていた顔と半身を戻し、その視線を先へと戻した。


「まだウジャウジャ沸いてくるか。忌々しい」


 その香故の冷たい瞳が見据えたのは、広がる一体の向こう。

 その先には、新手と思しきオブスタクルの軍勢が、また大挙して押し寄せる光景があった。


「本当に、フォース パフォーマーだ……」


 一方その背後。

 二人の内の女二尉は、中隊長に寄り添いつつも。その視線を香故の背中姿に注ぎ、何か感嘆の色をその顔に作っている。実は女二尉は、フォース パフォーマーのファンの一人であった。


「ッ……歌声だけで、こうも……」


 だが一方、中隊長にあっては。

 その精強な顔立ちをしかし苦い色に染め。視線を落とし静かに呟き零している。

 それは、はっきり言ってあまり好ましくな感情を露にしたものだ。

 中隊長は自らの部隊を率い、命がけの必死の防衛抵抗を行ってきた。しかし強大な脅威であるオブスタクルを前に、それらはあまり芳しい物とはならず、中隊長は辛酸を舐める事となった。

 そんな所へ、突如として現れ。そして歌声という本来戦いとは無縁の術で、しかしいとも容易くオブスタクル達を撃退無力化してしまった、香故等フォース パフォーマーという存在。

 それは、正直言って中隊長からすれば、自分等の戦いを無下にされたようであり、決して快い物では無かったのだ。

 そんな複雑な想いに苛まれる中隊長。


「……っ?」


 だが、その中隊長の身に人影が差し。そして自身の前に気配を感じたのはその時。


「――ッ!?」


 中隊長が顔を起こそうとしたしかしその前に。しかし中隊長のその手は唐突に握られ、そして中隊長は意思に反して引っ張り上げられ、強引に立ち上がらさせられた。


「失礼を」


 強引に引き起こされ、どうにか足元を安定させて立った中隊長。

 その目の前。中隊長より頭一つ分低い位置で彼を見つめ、淡々とそんな言葉を寄こす人影。

 その正体は、他でもない香故。香故のその手袋に覆われた繊細な手先は、中隊長の猛々しい手を握っている。中隊長を引き起こしたのは、他ならぬ香故であった。


「な、何を……ッ?」

「歌声が一つでも多く必要です。ご助力を」


 唐突な事態にその精強な顔を戸惑いを浮かべる中隊長に、一方の香故はそんな淡々とした、要請と思しき言葉だけを寄こす。


「は……?一体――」


 香故の発現の要領が得られずに、引き続き戸惑いの言葉を零す中隊長。

 しかし香故は、まるで構わないと言った様子で。中隊長の手を握ったまま、空いていたもう片方の手を、中隊長の胸元にそっと当てた。

 ――それが起こったのは、その瞬間。

 中隊長の足元で発光現象が発生。それは光のベールを作り、中隊長の身体を登り始めた。


「なッ!?」

「えっ!」


 中隊長当人。そして背後で状況を見ていた二尉からそれぞれ驚きの声が上がる。

 しかし現象はそれに構わず動き、光のベールは中隊長の身を包み登り。程なくして中隊長の身を頭部まで潜り切り、そして消失した。


「――い、今のはッ?」


 突然自分の身を包んだ発光現象。それを訝しみ困惑し、おそらくその現象の原因であろう、目の前の香故をほぼ睨むように見て尋ねる。

 その香故はと言えば、握っていた中隊長の手を放して、何か自身のユニフォームの胸元を探っている。


「ちゅ、中隊長……?」


 しかし、中隊長の背後より別の、何か呆けたような声が聞こえたのはその時だった。

 その声に振り向けば、背後では彼の補佐官の二尉が。何かポカーンとした、そして同時に若干見惚れているような顔で、こちらを見ていた。


「お姿が……」


 その二尉から、引き続きそんな呆けたような色で言葉が紡がれ。同時に彼女は中隊長の身を申し訳程度に指し示す。


「姿……――!?」


 促され、自身の身体に視線を落とす中隊長。

 そしてそこで初めて、中隊長は自身の身体に起こった事態に気付いた。

 見れば、纏う服装が――否、自身の身体が変貌していた。

 中隊長が纏うは、今までの迷彩服2型から一変した、薄黄色の薄手の開襟シャツに、緑色の丈の短めのタイトスカート。それは陸上任務隊の女性隊員が夏季に纏う夏服、三種制服に類似している。いや、正確には本来の物と比べてさらに凝った装飾が少し多く、彩り豊かなように見えた。

 そして何より。その上衣開襟シャツを纏う中隊長の胸元は、逞しかった胸筋から変貌し、豊満な膨らみを作って開襟シャツを盛り上げている。

 見れば手足も、太く強靭な彼のそれから、細く美麗な線を描くものへと変貌していた。


「ど、どういう……!?」


 気付けば、声も何か高くなっている。

 その答えを求めるべく、再び元凶であろう香故の方へと向く。


「ッ!?」


 しかし、直後に中隊長の目が移したのは、また別の姿だった。

 見れば、香故はその手に折り畳み式の手鏡を持ち、中隊長に差し出している。

 中隊長が見たのは、その手鏡が映し出す姿。そこに映るは――一人の美少女。

 年齢は17歳程、身長は160程か。

整った顔立ちに、凛々しく少し釣り上がった目尻の眼が映える。髪は黒髪の肩まで届くかレベルのセミショート。頭にはバッジをワンポイントにした緑のベレー帽を被っている。

 そして中隊長が自身の顔に手を当てる動作をすると、鏡に映る美少女も、まったく同じ動きをした。

 当然だ。鏡の美少女は、中隊長の彼自身なのだから。


「ま……さか……」


 香故により手鏡が降ろされ、中隊長は驚き冷め止まぬまま、また香故の姿を直視する。先まで中隊長より頭一つ低い位置にあったはずの香故の顔と目線は、今は若干高い位置にある。


「歌声の支援が必要です。三佐、ご協力を」


 そんな中隊長の内心を知ってか知らずか。香故はまた淡々と、そんな要請の言葉を寄こす。



 これは、性転換体質の発現者の中でも、そのまた一部の者に見られる特性の一つ。

 一部の性転換体質の発現者は、また別の男性を任意に女性へと姿を変貌させる事を可能とした。

 フォース パフォーマーのメンバーもこの特性を保有。

 そして、状況戦況次第では現場の男性隊員に性転換措置を施し。歌声による協力支援を求める事が、作戦の一環となっていた。



 今、中隊長の身に起こり、施されたのがまさにそれであった。

 中隊長の身は精強な男性隊員のそれから、青い果実と表現するのがふさわしい美少女に変貌。

 三種制服を模したユニフォームは、現場の支援者に提供される衣装であり、肩章はご丁寧に中隊長の階級である三等陸佐をそのまま反映表記している。


「中隊長……かわいい……」


 そんな変貌した中隊長の姿を前に、補佐官の二尉はその端麗な顔をしかし緩めて、呆けたように感想を零す。


「何を呑気な……――」


 そんな評する言葉に、当の中隊長は変貌した美少女顔を顰め、また変貌した高い声色で突っ込みの言葉を入れようとする。

 しかし、次の瞬間に伝わり来た地鳴りが、それを拒んだ。

 中隊長がそれを感じ、振り向き見れば。先より新手のオブスタクルの大群が、獰猛をそのまま体現したかのような色で、近場まで迫っている光景が見えた。


「堪え性の無い連中だ――三佐、私とご一緒に」


 中隊長がまたその表情を険しくする一方。

 香故は冷笑と共にオブスタクル達を一瞥。そして中隊長へ振り向き告げると、またおもむろに中隊長の手を取る。


「二尉は、この場を動かないでください」


 続け、背後の二尉にそんな忠告の言葉を紡ぐ香故。


「な、何を――」


 未だ要領を得ず、疑問の声を上げかける中隊長。

 だが、その言葉は途中で掻き消えた。

 そして見れば、その場にあったはずの香故と中隊長の姿が、忽然と消えていた。


「え……!?」


 その場に残された二尉が、驚き言葉を零す。

 しかし直後に彼女は上空に微かな気配を感じ取り、それを追い視線を上げる。

 その二尉の目に映ったのは、上空高くへと飛びあがった、香故と中隊長の姿であった――





 上空宙空。

 そこに身を置くは、香故とそれに手を引かれエスコートされる中隊長。


「――ッ……ぅぁ……!?」


 中隊長はその高く可愛らしい声色で、しかし突然の事態に困惑の声を零している。

 無意識的にその頭部を彩るベレー帽を片手で抑え、飛ばないようになんとか保持。

 タイトスカートの中には風が舞い込む。下着は男性時のボクサーパンツからこれまたご丁寧にスパッツへと変貌していたが、大変に落ち着かない感覚で中隊長を苛んでいる。


「大丈夫、しっかり掴まえていますから」

「そんな事を言われて……ッ、協力って……ッ!」


 そんな中隊長に、その手を引きエスコートする香故は、また淡々と告げる。

 その二人の身体は、それまでの飛び上がる勢いを減じ、緩やかに降下へと転向。その二人の直上や側方を、また複数機のUAVが飛び抜けたのはその瞬間。内の何機かは旋回し舞い戻り、香故等に追従し飛行を始める。

 そして、二人の眼が眼下に見たのは、地面を埋め尽くさん勢いで、蠢き突進するオブスタクルの群れ。


「――ッ!」


 それを見た中隊長の今は可憐で凛とした瞳は、それまでの戸惑う様子を潜め、戦う者の色を宿す。


「さぁ、反逆の時です ――」


 中隊長のそれを振り向き見た香故は、微かに口角を上げると。静かに促すように中隊長に紡ぐ。

 そして――


「――――――」


 香故はまたその冷たくも麗しい声色で、歌声を紡ぎ始める。

 それは恋歌。先まで歌い奏でられていた物とは別の曲。

 歌い出しのその一節は、生涯一度の恋を、貴方の心に委ねる事を謳ったもの。


「!」


 そしてそれを聞いた中隊長の脳裏に、心には。不思議なことにそれに続く歌詞が、自然と浮かび上がる。


「――――――!」

「――――――ッ!」


 そして続く、誰にも憚る事のない口づけに焦がれる一節を。

 香故と中隊長はそのそれぞれの歌声を交え絡ませて、力強く奏でる。

 瞬間――追従飛行するUAVから、アップテンポな入りで曲が流れ響き始めた。


「――――――」


 前奏の一拍を置き、香故がリードするように本奏に乗せて歌声を紡ぎ奏でる。

 歌詞は、儚く舞い散る花吹雪を、手に余る数多の星空を表現するもの。


「――――――」


 それに倣い続き中隊長が、歌声を、続く歌詞を紡ぐ。

 歌詞は、花吹雪を、星空を愛おしくそして寂しく思い、それを想う貴方と重ねる心を謳う。

 その間に二人は宙空を降下し、オブスタクルの大群の真上へと迫る。そんな二人を襲い掠めるは、オブスタクル達がその身に備える火器が吹く、数多の火力攻撃。対空砲火。

 しかしそれを前にして、香故と中隊長が臆する様子は一切無い。


「―――」

「―――!」

「―――」

「―――!」


 砲火を掻い潜りながら、二人は歌い続ける。

 香故が思いを届ける一節を静かに紡ぎ。中隊長がそれに続き重ね、その身張り裂けようともそれを成す意思を紡ぐ。


「――――――」

「――――――」


 そして二人合わせて、感覚のままに衝動に任せる事を訴える事を紡ぎ奏で。


「――ッ――ッ――ッ」

「――ッ――ッ――ッ!」


 その衝動を、効果音を模した擬音で可愛らしく力強く表現し歌い奏でる。

 ――瞬間。

 二人に追従飛行していたUAV隊とは、また別のUAV隊が別方向より進入飛来。

 その列機が腹に抱いていた対戦車ミサイルが一斉に撃ち放たれ、オブスタクルの群れを攫えるように着弾。

 爆炎が線を描くように、広範囲で立て続いて上がり、オブスタクル達を爆炎で包んだ。

 ここまでで香故と中隊長の歌声が広がり浸透し、その影響でその強靭さを大きく減退させていたオブスタクル達は。まるで紙細工のようにその身を損壊崩壊させ、そして煙のように消し飛び掻き消えた。

 爆炎が掻き消え。オブスタクルが消し払われ露になった地上地面へ、香故と中隊長は軽やかに着地。かと思えば次の瞬間、二人は地面を蹴り、飛び出し駆けだしていた。

 そして引き続き追従するUAVが流す音楽は、よりアップテンポなサビへと突入。


「――――――」

「――――――!」


 そして二人は、それぞれの歌声を交え、再び歌声を紡ぎ始める。

 それは曲の入りにも謳った、生涯一度の恋を想う貴方に委ねる一節。それをより一層力強く奏で響かせながら、飛び駆ける。

 香故は無論、中隊長もここまでですでに、自らの成すべき行動は理解できていた。

 その二人が歌声を奏でながら、飛ぶように駆けて突っ込むは、まだ残り蠢くオブスタクルの群れ。

 そして二人は、群れの間近まで接近した所で、二手に別れ飛んだ。


「――――――」

「――――――!」


 何にも邪魔させない口づけを約束する歌詞を紡ぎながら、二人はオブスタクルの群れの最中を駆ける。

 蠢き、そして飛び掛かり襲い来る小~中型のオブスタクルを、しかし揶揄うように、舞うように躱し。

 大型オブスタクルの足元を掠め、掬い。

 またはその背を飛び石のように踏んで飛び。

 軍勢の中を縫い駆け、飛び、オブスタクル達を翻弄しながら。その歌声を広め浸透させてゆく。

 そして追従、あるいは別動のUAV隊がそこへ火力投射を行い。歌声により脆くなったオブスタクル達を消し飛ばし、屠ってゆく。


「――――――」

「――――――!」


 歌声を絶やす事無く響かせながら、香故と中隊長は縦横無尽に。しかし優雅に舞うように飛び駆けまわり。

 UAV隊と連携し、凶悪な人類の敵を、しかし揶揄い遊ぶように殲滅してゆく。

 駆け巡り、暴れ回った末に。二人は埋め尽くす侵略者が消え、開け広がった地上の一点で、舞い込みあるいは駆け込み合流。


「――――――ッ」

「――――――!」


 そして、それぞれ立ち構えて胸に手を添え、凛とした視線を上げ。

サビの締めである、自らを抱き留め虜にする事を、想う貴方に欲する一節を。

可憐で力強い歌声で、響かせ歌い上げた――



――――――――――



メインキャラだけじゃなくて脇役もTSFしちゃうのが好き。

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