第25話 現地調査①
さて。
腹ごしらえも済ませたことだし、そろそろ本題に移ることとしようか――すっかり何をしないといけないのか忘れている人も多いのではないだろうか?
そういう人のために、一応言っておく。
ぼく達がここにやって来ているのは――。
「鬼火を生み出す超能力者に会って、インタビューするためよ」
――うん、まあ、間違っていない……のかな?
アリスの回答は百点満点で採点するならば、六十点ぐらいか。
大量減点の主な要因は、超能力者など存在しないってことだろうか。いい加減に現実を見ろ、ということだ。
流石にテストで同じ回答をしてきたら、先生だって同じことを言うだろう。多分。
「わたしは人的要因であって欲しいですけれどね。たとえ超能力者であろうが何であろうが……」
リアリストな考えを盛っているのは真凜だった。
「リアリストではないですよ。ただ単純に、現代科学で解明出来ないような結論だったら、嫌だなって話です」
「……幽霊が怖いなら怖いとはっきり言っちゃえば?」
核心を突くんじゃない、和紗。
そりゃあ、ぼくだってそうなんだろうなって思ったけれどさ。
「……べ、別に怖いなどと一言も言っていませんけれども? まあ、夜は危険ですからね? あの禁足地だって何を理由にそうなっているのかは知りませんし?」
明らかに動揺しているじゃねえか。
もう少し、息を整えた方が良いぞ。
「何を言っているのか……。わたしは何も怖いとは一言も言っていないじゃないですか」
「いや、見た目見た目。言葉で言っていなくても、見た目がそうなっているんだから。流石にそこまでは騙しきれないからな」
人間、怖いとか不安に思っていると、心拍数が上がるっていうデータがあってな。
ほんとうかどうかは、知らないけれどね。
「え……何それ、いきなり言っておいてそんな崖から突き落とす発言する? いや、逆か。崖から突き落としておいて、直ぐにロープ落として助けてくれる、みたいな。そんなこと、有り得る? ヤンデレ最終形態?」
何だよ、ヤンデレ最終形態って。
ってか、そんなに喋るのか、真凜。
陸上部に在籍している以上、やはり陽キャなのは間違いないと思っていたけれど……。予測は間違いなかったようだ。
「陸上部にどんな煌びやかなイメージを抱いているのか分からないけれど……、そんな綺麗なもんでもないけれどね? 寧ろ激戦区って感じだねえ。だって、記録と戦い、部員と戦い、己とも戦っているんだから。もし一年生から入部すれば引退までの二年半はそれをし続けなければならない。体力も、精神力も使うよ」
「じゃあ、どうして入部しているんだ?」
「愚問だね。そりゃあ……陸上が好きだからに決まっているじゃないか」
「陸上が好きだから……。うん、まあ、そりゃあその通りなのだろうけれども。この学校に入ってもやっているんだから、大好きなのだろうけれどさ……」
この学校は、お嬢様学校として有名だ。まあ、ぼくみたいに男子だっているのだけれど、全てを引っくるめて、お嬢様学校と呼ばれている。
そういうこともあり、運動部よりも文化部の方がパワーバランスが傾いていたりする。部活動での功績は然程気にしていないようだし。一応、学生全員が何らかの部活動に入っていないといけないのだけれど、それは昔に決められた規約が改正されていないがために守っている――ということだけに過ぎない。
「……別にわたしは何処でだって陸上はするよ。ここに入っているのは、家族のレッテルだ。家族が他人から貼られたレッテルを守るために、居るだけに過ぎない。だから、わたしはわたし自身のレッテルを探している……という訳」
それが陸上だった――ということか?
まあ、やり口としては間違っていないのだろうけれど……、それが正であるかは直ぐには判断出来ないよな。少なくとも卒業するタイミングぐらいにならないと分からないような気がする。
「レッテルはそんな直ぐには定着しないよ。それぐらい、わたしにだって分かっている……。けれども、行動しない限りは家族のレッテルを貼られ続ける。それはダメだ。変わろうとしないことは、滅びゆく運命にある。それは歴史が証明しているよ」
安寧も悪くないと思うけれどね?
はてさて。
無駄話はこれまでにしておいて――ぼちぼち出発することとしよう。
目的地は、校庭にある禁足地だ。
◇◇◇
……とまあ、見栄を張って出発したはいいものの、正直言ってぼくだって怖い物は怖い。鬼火が何であるか確定していない以上、ほんとうに幽霊の仕業である可能性も、一パーセントぐらいは存在しているのだ……、多過ぎかな?
禁足地は、思ったより小さい。多分十分もすれば一周出来てしまうぐらいか。木々が鬱蒼と生い茂っていて、そこに何があるかは判別出来ない。
確かに、仮に禁足地の中で何かが光っていても、それは直ぐに発見出来そうだ――それが何であるかの判断は、きっと付きづらいだろうけれど。
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