第27話 最終話 求愛?

 ナタリーナは、オレがアドバイザーの【ブキミししょー】と気づいていた。その上で、オレに感謝してくれている。


「どこで気づいた?」


 隠す必要もないかと、オレはナタリーナに問いかけた。


「ボンヤリと」


 思考がブキミししょーと似すぎている点が、多くあったらしい。


「決定的だったのは、ついこの間」


「そんなこと、あったか?」


 オレは結構、注意を払っていた気がしたんだが。


「ドワーフが結婚式に釜をプレゼントするのを、ししょーは知っていた。わたし、教えていないのに」


 あー。しまった。そんなところで足がついていたのか。


「すまん。お前の邪魔をしないように、アドバイスされたときだけ答えようって構えていたんだが」


「助かってる。ししょーの言葉でも、キョウマ自身にも」


 釜をずっと抱えたまま、ナタリーナは視線を泳がせていた。


「受け取っていいんだよな?」


「もちろん」


 オレは、ナタリーナがくれた釜を受け取る。


 木でできたフタを開けた。中身は、釜めしだ。それも、手作りじゃないか。オレが考案したより、豪華になっている。


「お前が作ったのか?」


「作り方を、モヒートから教わって」


 ナタリーナの後ろで、モヒートが手を振った。


「具材がてんこ盛りだな?」


「その方がおいしいって」


 釜めしと言ったら、乗車して食べるものだろう。オレとナタリーナは、SLに乗ろうとした。


「いや。のんびり、風を感じながら食おうか」

「それがいいかも」


 トロッコ列車の方へ、乗り込む。


 SLと比べても、トロトロ運転だ。しかし、これがいい。


 ああ、これだ。このまったりしたスピードで進むのがちょうどいい。


「じゃあ、いただきます」


 オレは、ナタリーナお手製の釜めしをもらう。


「……うまい。お前さん、すぐお嫁さんになれるぜ」


「いやいや勘違いしないでほしい。パートナーをねぎらっているだけ。結婚したいと入っていない」


 手をパタパタさせながら、ナタリーナは冷や汗をかく。


「そうなのか?」


「うんうん」


 オレは、スマホ型冒険者証を、懐から出す。


『とてもおいしいですね。愛情が感じられます』


「くああああ」


 文面を読みながら、ナタリーナが顔を隠した。


「プロポーズ作戦は、うまくいったようデース」


「ほほえまですわ」


 モヒートとジャックが、馬で追いかけてくる。歩くよりちょっと早いレベルのの鈍行だから、馬でも追いついてしまうのだ。


「いやあ、知りませんでした。鹿の人が王女だったなんて。鹿の人が男性に求愛をしたので、てっきりそっちの趣味かと」


 王女であるナタリーナは、【認識阻害のフード】によって変装している。世間様には、マッチョなオッサンに見えているのだ。


 しかし、ナタリーナはオレに礼を言おうとして、フードを取った。街を発展させたと、王女としてオレに感謝してくれたのである。


「お前さんの功績だ。オレは何もしていない」


「わたしに任せてくれたことも、影で支えてくれていたことも、全部わかってる。だから、感謝している」


「そうか。こちらこそありがとうな。せめて感謝のキスを」


「いやいやいや発情しないで」


 手で静止しつつも、手を握りしめてきたのは向こうの方だ。


「キョウマはおちょくってきてるのかマジなのか、ときどきわからない」


「相思相愛だと思っていたが」


「まあまあ。感謝はしているけど、それとこれとは別」


 オレの腕をブラブラさせながら、ナタリーナは口ごもる。


「ドワーフの求愛方法だから、てっきり」


「ままま、まあまあまあ。それくらい感謝しているってことで」


 腕のブラブラが、強さを増してきた。


「言い訳がましいデース」


「ほんとは、お慕いもうしているくせに。ニンジンをハート型に切るなんて、教えていませんのに」


 ジャックとモヒートが、ナタリーナをちゃかす。


「鹿の人に、運命の人が誕生したのですね?」


「だから、ちがうー」


 ナタリーナは否定するほどに、赤面した。


「さあああてええ。次の土地を目指す」


 気持ちを無理やり切り替えようとしたのか、ナタリーナが話題を変える。


「逃げたデース」


「逃げましたわ」


 レッドアイ夫妻にからかわれながらも、ナタリーナは新たな目的地を指さした。


「次は、ナギアンの盗賊退治だから。気を引き締めるように」


「おう。またこのししょーが、指示してやるよ」


「もーうっ」


 ナタリーナが、オレの胸をドンと叩く。


(おしまい)

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ゲーム世界に召喚された指示厨は、最強のアドバイザーだった。方向音痴な姫様の鉄道開発を手助けして伝説となる 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

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