第7話 暴虐非道! ティセ子さん、異世界でうどんを食べる!

 ラヴィーさんはノリノリですが、ティセ子さんは違う意見のようです。


「いえ、その前に」


「その前に……?」


 ラヴィーさんにティセ子さんは言いました。


「ちょっとお腹が空いたので、うどんでも食べていきましょう」


「わーい、うどん!」


「うどん……」


 ティルさんとティオさんも異存は無いようですが、ラヴィーさんは突然、怒り出しました。


「うどん! よりにもよってうどんだと! この異世界でうどん!!」


「何か問題でも?」


「大体異世界なんだぞ!! 常識的に考えて異世界にうどんがあるはずなかろう!!」


「なるほど。なるほど、なるほど」


 ティセ子さんは両手をぱたぱたさせて肯きます。


「ラヴィーの言うことももっともです。それでは常識的に考えてみます」


 そう言うとティセ子さんは両手をすとんと下ろして、上目遣いに考え込み始めました。


 まだ考えてます。


 まだまだ考えています。


 考えてます。


 十数秒が過ぎ、いい加減ラヴィーさんも痺れを切らしそうになった頃、ティセ子さんはやにわに両手をぱたぱたさせ始めました。


「常識的に考えました、ラヴィー」


 ラヴィーさんに向かって身を乗り出すようにして言いました。


「常識的に考えて、日本語が通じるこの村に、うどん屋さんがないはずがありません」


 日本語が通じるのだから、うどん屋さんが無いはずは無い!


 これは説得力がある!!


「いや、でも!! ここはそもそも異世界だし、うどん屋さんがあるとは思えない……」


 そう反論するラヴィーさんにティルさんがとどめを刺します。


「あ、うどん屋さんだ!!」


「讃岐うどんね」


 そう言うティオさんの目の前には、ご立派な讃岐うどんのうどん屋さんがありました。


「素晴らしいですね。うどん屋さんです」


 ティセ子さんはそう言いますが、ラヴィーさんは呆然としております。


「い、異世界に讃岐うどん!? 異世界警察が! 異世界警察が黙っておらんぞ!!」


「異世界を侮ってはいけませんよ」


 なぜかティセ子さんは偉そうにラヴィーさんへ言いました。


「うう、それもそうだが。お前に言われると、なんか腹立つな」


 分からなくもありません。


 その時です。のれんをあげてうどん屋さんの大将が、ティセ子さんたちに声を掛けました。


「へい、らっしゃい!」


 もう完全にうどん屋さんです。


「それでは入りましょう。ラヴィー」


 ティセ子さんは呆然としているラヴィーさんの手を引いてうどん屋さんに入りました。


「ティルは天ぷらうどん!!」


「私はきつねうどん……」


 ティルさんとティオさんは早速注文します。ティセ子さんはメニューを見ながら大将に言いました。


「私は釜揚げうどんに野菜のかき揚げをお願いします。ラヴィーはどうしますか?」


「ええい! 異世界でうどんを食べるのも得がたい経験だ!」


 ラヴィーさんも開き直りました。


「カレーうどん!」


 つゆが飛ぶと服が汚れると評判のカレーうどんを注文したチャレンジャーなラヴィーさんです。


 テーブルに着いてしばらくするとうどんが四人前、運ばれて来ました。もちろん熱々です。熱々。


「わ~~い、うどん!!」


 ティルさんに続いてみんなもうどんを食べ始めます。


「おいしいですね」


「おいしいわね」


「……う、うん。まぁ、異世界にしてはおいしいな」


 ずるずる。ティセ子さんたちは異世界の小さな村でうどんを啜りました。


 おいしい。結構、おいしい。


 ティセ子さんたちはあっと言う間にうどんを食べました。


「さて、うどんも食べた事ですし……」


 ティセ子さんがそう切り出すと、ラヴィーさんは身を乗り出しました。


「定番としては、まずギルドに登録してクエストを受注かな。この村は結構人口も多いし、ギルドはあるだろう。それからレベルを上げてビッグクエストに……」


 そう言うラヴィーに構わずティセ子さん姉妹は無慈悲に言いました。


「帰りましょう」


「帰ろうっと」


「帰ろうかしら……」


「ええ!? 帰るの? これからなのに!!」


 異世界でもマイペースなティセ子さん姉妹と一緒に、ラヴィーさんははたして冒険の旅に出る事が出来るのか!?

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ティセ子さん、あどべんちゅあ 庄司卓 @SYOJI-TAKASHI

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