第6話 一緒にお風呂に入りたい2


//SE 声の反響(密着状態では無し)

//シャワーの音が止まる


「か、体、流し終わったので」


「先輩の隣でお湯に浸かっても、いいですか?」


「……はい。ありがとうございます」


//SE お湯に浸かる音


「ふぁぁ……っ」


「あったかい……」


「でも、さすがに二人だと少し狭いですね」


「あ、いえ、別に先輩が出るように急かしたわけじゃなくて」


「……むしろ、まだ出ないで欲しいというか」


「先輩と一緒に、あったまりたいです」


「……はい。先輩も同じ気持ち、ですか?」


「……嬉しい」


「あ、そうだ」


「先輩」


「わ、私に……寄りかかってもらえませんか?」


//SE お湯の音


「……いえ、肩じゃなくて、ですね」


「その」


「私の体全体に、背中から……寄りかかって欲しいなって」


//動揺する先輩

//SE お湯の音


「だ、大丈夫ですよ。水着だって着てますし」


「い、いたって健全な……」


「高校生カップルがよくやる、普通のスキンシップですから」


「……多分」


「ん……逆の方がいいんじゃないか?」


「そ、それはダメです」


「だって、私の水着、背中で縛ってるんですよ」


「逆にしたら、先輩」


「……紐を引っ張るだけで、簡単に解けちゃうじゃないですか」


「だ、だから、逆はダメです」


「……はい。脚の間に座るだけなら、いいんですか?」


「……っ、やった、ありがとうございます」


//SE お湯の音


「じゃあ、はい……どうぞ、先輩」


「来てください」


//SE お湯の音

//声が近づく


「わあ……先輩の背中、とっても大きいです」


「この体勢なら、二人とも湯船に縦に入れるので、脚を伸ばせますね」


「やっぱりこれが正解でした」


「……」//ドキドキしてる吐息


「…………あの、先輩」


「後ろから、抱きついてもいいですか?」


「……ダメ?」


「え〜」


「……でも、抱きついたら、ほら」


//SE お湯の音

//耳元に近づく


「こうやって耳元で、先輩が大好きな私の囁き声が聞けますよ?」


「……ふふっ。はい」


「素直でよろしいです」


//SE お湯の音


「ぎゅーーーっ」


「ふふっ……先輩の心臓、すごいドキドキしてますよ」


「緊張、してるんですか?」


「……可愛い」


「……え? 私のドキドキも、背中から伝わってる?」


「そ、そりゃあ、私だって緊張してるに決まってるじゃないですか」


「先輩と初めて一緒に入るお風呂で、こんなに密着してるんです」


「緊張……しない方がおかしいですよ」


「……」//緊張が出てる吐息


「先輩、お耳真っ赤ですよ」


//耳元から離れる


「……あ、こら」


「こっち向くのは禁止です」


「私は、緊張はしてまいますが、耳まで赤くはなってません」


「……嘘じゃないです。本当です」


「もう、確認しようとしないでください」


「……はい。振り向くのは禁止です」


//耳元に近づく


「代わりに、もっといっぱい囁いてあげますね」


「先輩」


「いつも勉強、お疲れ様です」


「学校でもお家でも、たくさん頑張ってて偉いですね」


「いい子いい子」


「……ふふっ、癒されますか?」


「じゃあ、もっとしてあげますね」


//SE お湯の音


「いい子いい子……頑張ってて偉い偉い」


「いい子いい子……偉い偉い」


「先輩が毎日たくさん頑張ってるの、私はちゃんと見てますから」


「適当に褒めてるわけじゃあ、ないですからね」


「……よしよし」


「今日もよく頑張りました」


「本当に偉いですよ、先輩」


//SE お湯の音

//反対の耳に近づく


「こっちのお耳のことも、忘れてないですからね」


「よしよし」


「偉い偉い」


「ふふっ、少しくすぐったいですか?」


「……でも、それが好きなんですよね?」


「よしよし」


「よしよし」


「……」//本題を切り出そうか悩んでる吐息


「あの……先輩」


「まだこの後……時間はたっぷりありますが」


「今日、私といられて、楽しかったですか?」


「私、先輩のこと、ちゃんと満足させられましたか?」


「先輩のこと、ちゃんと癒せていましたか?」


「……最高だった?」


「……それなら、よかったです」


「え、なんでそんなこと聞くのか、ですか?」


「それは……」


「……だって」


「最近の先輩、たまに難しい顔してるから」


「何か悩んでることとか」


「嫌なことが、あったのかなって……」


「今日だって、私が料理してる時」


「大きなため息ついてましたよね?」


「その、キッチンから、見えるんですよ」


「だから……」


「……」//聞くのを少し怖がってる息づかい


「私には、言いづらいことですか?」


「私に問題があるのなら、遠慮せずに言ってもらえれば……直しますよ?」


「それで先輩のこと」


「嫌いになったりなんかしませんよ?」


//耳元から離れる


「……私、先輩の役に立ちたいです」


「彼女として、もっと先輩に寄り添いたいです」


「先輩のこと、大好きだから」


「先輩の笑った顔が好きだから」


「……悩んでることがあるなら、一緒に、悩んであげたいです」


「でも、本当に言いたくないことなら」


「無理してまで言って欲しいわけじゃないです」


「……すみません」


「上手く伝えられてないですよね」//不安強め


「えっと……つまりですね」


//耳元に近づく

//演技依頼 不安による涙交じりの声


「私はいつでも」


「先輩の助けになる準備、できてますから」


「話したくなったら、いつでも」


「どんなことでも」


「遠慮せずに」


「話してくださいね」


//耳元から離れる


「……」//無言


//SE お湯の音


「……ぁ」


「振り返るの、禁止って言ったじゃないですか」


「……泣きそうな声、だったから?」


//SE お湯の音

//声が近づく


「わ」


「……なんで抱きしめてくれちゃうんですか」


「悩んでるのは、先輩なのに」


「……私、抱きしめられたら、もう、我慢できなくて」


「泣いちゃうじゃ……ないですか」


「こんな顔、見られたくなかったのに……」


「振り返っちゃ、ダメだったのに……っ」


「だって、すごい、面倒くさい女みたいじゃないですか」


「悩んでる本人より」


「先にっ……こんなの」//鼻を啜りながら


「ごめんって……なんで先輩が謝るんですか?」


「私がもっと先輩の役に立てたらよかったのに」


「謝るのは、私の方なのに」


「……はい」


「やっぱり、私のこと、なんですか?」


「……はい」


「…………え? 私のことだけど、不満とかじゃない?」


「だったら、いったい……」


//SE お湯の音

//声が遠ざかる


「先輩、どうしました?」


「いきなりそんな、真剣な顔で、見つめてきて」


「内容によっては、私……」


「本気で、泣きますよ」


「……」//無言


「……………………え?」


「え、あの……え?」


「……これからは、私と」


「ただ付き合うんじゃなくて」


「……結婚を視野に入れて、付き合いたい?」


「あの……その……わ、わたし」


「……」//泣くのを我慢してる


「……うぐっ……うぅ、っ……ぁぁぁ……」//我慢できずに泣く


//SE お湯の音

//声が近づく


「わたし、別れてって言われるんじゃないかって思って……っ!」


「すごい、ふあん、だったのにっ」


「うぁぁぁ……っ……あぁ……」


「先輩の、ばかぁ……っ!」


「そういうことなら、もっと早く言ってくださいっ!」


「そしたらもっと早く」


「もっとたくさん」


「イチャイチャ、できたのにぃっ」


「……」//呼吸を整える


「すごい不安だったんですからね」


「本当に」


「え、先輩も? ……受け入れてもらえるか不安だった?」


「なんですか、それ」


「……受け入れるに、決まってるじゃないですか」


「先輩との結婚、絶対」


「したいに決まってるじゃないですかっ!」


「ああ、もう……本当に」


「本当に……ふふ……浮気したら、許しませんからね」//嬉しさが不安に勝る


「最悪なプロポーズです」//嬉しそうに


「ふふっ……あははっ」//止まらない涙交じり


「……嬉しいっ」


「……でも、私を不安にさせた罰は受けてもらいますから」


「お風呂上がったら、覚悟してくださいよ」


「……」//嬉しさが滲み出る、安堵の吐息


「……ふふっ」


「先輩と、結婚」


「……ふふふっ」


「先輩から言ってきたんですから」


「もう取り消せませんよ」


「結婚、必ずしましょうね」


「……はい」


「約束です」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る