第5話 一緒にお風呂に入りたい


//SE 声の反響(シーン全体を通して)


//SE ドアが開く音


「し、失礼します……っ」


//SE お風呂場の足音


「あの……今更ですけど」


「ほ、本当に一緒にお風呂入るんですか?」


「……うぅ、だ、だって」


「お互い水着は着ていますけど」


「それでも、恥ずかしいじゃないですか……」


「……え、水着……似合ってる?」


「……先輩、話聞いてました?」


「いえ、なんでもないです」


「私も早くシャワーを浴びて、湯船に浸かることにします」


//SE シャワーの音


「……はい? なんですか?」


「……何か喋って?」


「シャワー浴びながらですか?」


「私としてはむしろ、湯船に浸かってるだけの先輩に喋ってて欲しいんですけど」


「あの……もしかして、私の声が反響するの、心地良いんですか?」


「……やっぱり」


「……まあ、そういうことなら」


「…………いいですよ」


「シャワー、控えめにしますね」


//シャワーの音(小さめ)


「それで、何を話せばいいんですか?」


「……決めてない?」


「それはダメです」


「私が喋ってあげるんですから、せめて話題くらいは提供してください」


「…………はい、はい」


「先輩の好きなところを、たくさん言っていけばいいんですか?」


「……」//少し呆れたため息


「ホント、いい趣味してますね、先輩は」


「いえ、嫌じゃないですよ」


「先輩の好きなところならたくさんあるので、希望通りずっと喋っていられそうですし」


「いいですよ」


「…………はい、どういたしまして」


「……約束通り、ちゃんと自分から『ありがとう』が言えましたね」


「偉いですよ、先輩」


「……あ、先輩の好きなところの一つ目がそれですね」


「約束を守ってくれるところ、です」


「先輩は私とのデートにも遅れたことないですし」


「今日だって時間通りに来てくれて」


「今は、ちゃんと『ありがとう』が言えました」


「先輩のそういう真摯なところが、私は大好きです」


「……あ、でも、どうしても外せない用事ができたとか、体調が悪いとかだったら」


「無理してまで約束守ろうとしなくていいですからね」


「例えデートの数分前にドタキャンされても、私は怒ったりしませんので」


「自分のことも優先していいですから」


「まあ、浮気とかだったら許しませんけど」


「先輩はそんなことしませんよね?」


「……はい。約束です」



「二つ目は、誰に対しても優しいところ、です」


「彼女である私に優しくしてくれるのは、もちろん嬉しいですけど」


「学校の友達や、道端ですれ違っただけのおじいさんやおばあさんにも笑顔で挨拶していたり」


「先輩のそういうところが、彼女として誇らしいです」


「……確かに、当たり前なことかもしれませんが」


「当たり前を当たり前にできるのは、とっても素敵な魅力ですよ」


「……ただ」


「朝にも言いましたが」


「あんまり学校の女の子たちに優しくされると」


「……私としては、複雑な気持ちもあるので」


「良い塩梅でお願いしますね」


「……先輩に一番優しくされるのは」


「……私がいいですから」



「三つ目は、体、ですかね」


「……あの」


「一応言っておきますけど」


「変な意味じゃないですからね?」


「優しくて大きな手とか、かっこいい目元とか」


「そういうの、ですからね?」


「あ、あと、先輩の笑った顔も好きです」


「先輩の笑った顔、とっても柔らかくて、可愛くて」


「裏表がないといいますか」


「楽しい時に、心の底から笑ってくれてるのが伝わってくるんです」


「……ああ、こんな優しい笑顔の人になら、私の全てを捧げてもいいかなって」


「そう思わせてくれるような、大好きな笑顔です」


「…………ふふっ」


「そうです。その笑顔です」


「その笑顔を見ると、不思議と私まで楽しい気分になってきて」


「自然と笑顔になれるんですよね」


「学校での私は多分、地味で笑わない女だと思われてるので」


「こんなに私が笑うのは」


「先輩の前でだけ……なんですからね?」


「……」//先輩の笑顔をかっこいいと思う吐息


「……なので、その」


「先輩」


「これからも……私のために」


「たくさん、笑ってくださいね」

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