第2話 罵倒して欲しい2


//耳元で囁く


「まずですね」


「先輩は、自己認識が甘いです」


「それはもう、ふわふわの綿アメに蜂蜜をた〜っぷりとかけて」


「お砂糖とシナモンをこれでもかってくらいまぶした上に」


「あんことミルクまでトッピングしたような」


「そんな激甘な自己認識です」


「ん〜? 先輩、言ってる意味がわからないって顔してますね」


「なら、もっとわかりやすく言ってあげます」


「……先輩は、自分がかっこいいってことを、もっと自覚するべきです」


「……」//やっぱり自覚してなかった、という優しい吐息


//耳元から離れる

//SE 移動でソファと服が擦れる音


「……先輩、今日も学校でたくさんの女の子と会話してましたよね」


「お昼休みに……たまたま、通りかかっただけですが」


「先輩は今日、可愛い女の子たちに囲まれて、楽しそうにご飯食べてましたよね」


「……みんな清楚で」


「……可愛い子ばっかり」


「せめて対面に座っていればいいものの」


「みんな少しでも先輩の近くに座ろうとして」


「……私がしてるみたいに、先輩のすぐ隣に陣取って」


「絶対ご飯食べづらいのに、椅子だけ持ってきてる子もいましたよね」


「……なんでそれで、自分が女の子たちから狙われてるって気づかないんですか?」


「先輩が男の子たちのグループでどんな立ち位置なのかは知りませんが」


「……女の子からは、とっても人気なんですよ?」


「……もちろん、浮気とかを疑ってるわけじゃないですけど」


「ちょ……ちょっとくらいは、心配になるじゃないですか」


//SE 衣擦れの音


「…………え?」


//SE ソファが軋む音


「きゃっ……!」


//膝の上に乗せられる


「きゅ、急に、どうしたんですか?」


「いきなり抱き寄せて……膝の上、なんて」


「……他の子には、絶対しないことだから?」


「だ、だからって、恥ずかしいですよ……」


「私今、スカート履いてるんですよ?」


//慌ててどかそうとする先輩

//SE 衣擦れの音


「い、いえ、もちろん下にズボンは穿いてるので」


「そんなに慌てなくてもいいですけど」


//耳元に近づく


「……穿いてなかったら、どうするつもりだったんですか?」


//耳元から離れる


「……ふふっ」


「こういう時、女の子より慌てちゃダメですよ」


「私なら、ちょっと恥ずかしいですけど、大丈夫ですから」


「落ちないように……腰、しっかり支えててくださいね?」


//SE 衣擦れの音


「ふふっ、ありがとうございます」


「……じゃあ、続き、しますね」


「あ、そうだ」


「この体勢なら」


//さっきまでと逆の耳に近づく


「こっちのお耳にも、囁いてあげられます」


//SE 衣擦れの音


「肩とか首とか、抱きついちゃうのは許してくださいね」


「ん……むしろ嬉しい?」


「もう……やっぱり変態さんですね、先輩は」


「そんなだから私、心配になっちゃうんですよ?」


「いいですか」


「学校で先輩に話しかけてくる女の子は」


「全員、先輩に気があるものだと思ってください」


「本当に、私の学年でも、先輩の学年でも、いっぱい噂聞くんですから」


「先輩のこと、優しくてかっこいいって、女の子はみんな言ってますよ」


「……こら、嬉しそうな顔しないでください」


「あんまり嬉しそうにすると、お耳にかじりついちゃいますからね」


「……それに、本気で嫉妬しますよ、私」


「嫌ならもっと堂々と、『俺は彼女いるぞ』ってアピールしてください」


「私は先輩とは学年が違うので、学校ではどうしてもそばに居られない時間があります」


「その隙を狙われないように」


「もっと私がいることを、ちゃんとアピールしてください」


「先輩はそれもできないような、不甲斐ない男じゃないでしょう?」


「……え? 私ですか?」


「勉強する時はメガネもしてますし、髪も長いですし……」


「こんな地味な女に話しかけてくる男の子なんていませんよ」


「……だとしても、可愛い? 声も?」


「……だ、だから、褒めるのは後にしてくださいってば」


「しかも、声を褒められるとすごく……喋りづらくなります」


「え、嫌だって……先輩?」


「ふふっ、だから、声を褒めるの禁止ですってば」


「ふっ……ふふっ……あはは」//嬉しそうに笑う


//耳元から離れる


「もう、耳元で囁くのやめにしますからね」


「先輩を罵倒するのも、私にはやっぱり無理そうです」


「だって私、先輩のこと」


「……本当に大好きなんですもん」


「分かったら腰、離してください」


//SE 衣擦れの音


「ありがとうございます」


「じゃあ、そろそろご飯の準備しますね」


「さすがに二人だとキッチンが狭いので」


「先輩は適当にくつろいでいてください」


「……」//恥ずかしがってる吐息


「……ちなみに、ですけど」


「私の声、そんなに好きなんですか?」


「……そ、そうですか」


「…………えへへ」//小さめ


「あ、えっと、それじゃあ先輩」


//耳元に近づく


「ご飯ができるまで、いい子で待っていてくださいね」


「……ふふっ」//嬉しそうに


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