第7話 フラッシュバック

「触って、確かめてよ・・・」


 上半身裸のエリは、頬を赤らめながら俺の方を顔だけ振り返って、そう口にする。


 俺は、エリの体と顔に釘付けになってしまった。


 動かないでいる俺に痺れを切らしたのか、エリはコチラに向かって歩き出した。その時、エリの上半身の体の華奢で、それなのに美しいラインと、控えめながらも確実に存在する胸の膨らみが俺の目に焼き付いた。


「ねえ、お願いだよ・・・」


 そう言いながらエリは、ゆっくりと、でも確実に俺の元へ近づいて来ていた。


 俺はテンパりながらエリに言う。


「分かった!分かったからベットに戻ってくれよ!な?」


 すると、エリは少しムッと頬を膨らませるとベットに戻っていった。そして、ベットに腰掛けると、また俺の方を向いて話す。


「戻ったよ、だから・・・来て?」


 俺は、その言葉に覚悟を決めて答える。


「分かった・・・」


 そして、俺はゆっくりとエリの元へ近づき、やがて俺はエリのことを押し倒していた。


 エリは赤らめた顔をわずかに逸らして、目を瞑っていた。その姿は、まるで・・・


 まるで・・・


(どうせ誰も俺の事なんか分かってくれないんだ!!)


「ハッ!!」


「・・・トシヤ?どうしたの?」


「ごめん・・・やっぱりそういうことは、できない」


「そんなっ!?どうして急に!?」


 エリはそう俺に尋ねる。俺はそれに感情を出さないように答える。


「だって俺は、元よりお前にそんなことしていい奴じゃないだろ・・・」


 するとエリは何かを思い出したような表情を浮かべ、そして、驚きの混じった声で俺に言う。


「もしかして、アンタあの日のこと今も引きずってるの!?私は、あのこと何も気にしてないよ!」


「でも俺は、その罪償うためにここにいるから」


 そして俺は、部屋の扉を閉めた。


 ・・・・・・


「きりーつ、れーい」


 アリガトウゴザイマシター


「ふー、疲れたな・・・」


 あれから数日、俺とエリはロクに会話すらできていない。


「どうしたもんかな・・・」


「トーシヤっ!」ピトッ


「冷たっ!?んだよユイ、もういい加減その手口は飽きたぞ」


「それは悪かったわね、それはそれとしてトシヤさ・・・」


「んだよ?」


 俺がそうぶっきらぼうに尋ねると、ユイは顔を覗き込むようにして答える。


「アンタ、最近エリちゃんと何かあった?」


 突然の的を得た質問に、俺は一瞬固まってしまった。けれどすぐに俺は平静を取り繕った答える。


「何で急にそんなこと聞くんだよ?」


「だって最近アンタ元気なかったもの。最初は学校が原因かもと思ったけど、学校でのアンタの行動は特に変わらなかったからエリちゃん絡みかなっ、てね?」


 そのあまりにも的確な診断に俺はおもわずため息をついてしまう。


「あれっ?違ったかしら?」


「いや、逆だ。あまりにもその通りすぎて返って言葉が出なかった」


「そうなのっ!?だったら私が相談に・・・」


「でも悪い、この事は誰の相談も受ける気はない。だから触れないでくれ」


 そう言って俺は何やら言っていたユイを無視して教室を後にした。


 そう、俺にはエリに手を出すような事はきっと許されない。あの日からずっと・・・

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