社会人を癒す百合

km黒

第1話

 「ウ、ヤバい」

私、藤木彩あやは女の危機に瀕している。

 

 新人会か歓迎会か知らないけど、こんなに飲むことになるなんて思わなかった、、


 こんなことなら出席を断っておくんだった。


 そんな過去の自分を責めて、今後悔しても遅いか、


 そんなことより、早くコンビニに向かわないと、スーツと自身の精神にダメージをおいかねない。


 確か、コンビニはここを曲がった先にあったような…


 そこでいきなり記憶は途切れてしまった。






 「は~、…え?」

コンビニのバイトがやっと終わって帰れると思ったらコンビニの前にスーツを着た女の人が倒れていた。


 考えろ、考えるんだ夏目華はな、この人をどうすればいい?少しみてからさっさと帰る?それとも家まで連れてって介護?


「おーい、生きてますかー?」

 まずは、意識があるかを確認しないと始まらない、それに意識があるならこの人の家まで送っていけばいい。


「う~~ん、生きゅてましゅよ~」

「…」

 ダメそうだ…うん?

どこかで聞いたことがあるような声が、、


「あやさん?」

「はーい」

 やっぱりそうだった。高校生の頃に家庭教師をしてもらってた記憶が蘇ってくる。まさかこんなところで再開するなんて…。


 受験が終わって、あやさんがいなくなってから気づいて、押し留めていた感情が暴れ出てくる。なんで受験報告する前に辞めちゃった?なんでプライベートの時間も犠牲にして勉強に付き合ってくれたの?なんで早くこの感情に気づかなかったの?


 いろんな文句が頭から出ては消えていく、そうしている内に気づいた。


 今ならもしかすると自分の心に正直に動けるのでは?


「あやさーん?夏目華ですよーおぼえてますかー?」

「う、んーお久しぶりー」

ちゃんと憶えててくれた。


 ちょっとホッとした。それじゃ次は


「華の合格の連絡ちゃんとみてました?」

「うん、、おめでとう」

どっちなんだこれは?


「合否直接伝える前に辞めちゃったのは何で?」

「研修とか色々あって忙しくなったから~」

なるほどねーまぁここからが本題なんだけどね


「華のこと好きですか?どう思ってました?」

「うん…素直で、可愛い…し、好きだよ、」


「それは恋愛的な意味で?」

「ううん、生徒としてー」

やっぱりダメか…分かってたけど、直接言われるとくるなぁ


「女の子は恋愛対象に入る?」

「わかんない」

 希望をちらつかせる回答をするなんて…てか、さっきから普通に喋ってるし、顔が赤いし、目が合わないし、さっきのでちょっと混乱してきたかも。


 このまま私の家に連れて帰ろうかな。大学入って一人暮らしだし、あやさんの同意を得れば色々できるし…


 ダメダメ煩悩は今お呼びじゃないの


「それじゃ家に帰りますよー」

一応腕に肩を回して、そうだ吐いても困るから袋を渡しておくか。


「はい。吐きそうになったら、この袋を使って下さいー」

ヤバ、全体重乗せてくるし、むちゃいい匂いする…


 ヤバい理性飛びそう、やめてそんな頬を紅くして、トロ目で華をみないで!


 どうしよう、寝ちゃったよ。

家まで連れてきたのはいいけど、ベットに座らせた瞬間に寝息をたてて倒れるなんて。


 あ、いいこと思いついちゃった。ふふ、顔のにやけが…明日の反応が楽しみ。





「え…?」

 何が起きているの?落ち着いて藤木彩。

まずは、身のまわりの状況を冷静に確認して分析するのよ。


 いきなり意識が飛んだと思ったら、知らない天井で目を覚ました。なんて展開、何度も経験してきた。


 だけど、この家主であろう人が隣で、全裸になって寝ている。しかも私もだ。

 

 よく見たら隣の人女性だし!


 何でだ、暑くないのに汗が止まらない。

落ち着け私、なにも、女性とする趣味は私には無い。だから大丈夫。たまたま泊まらせてくれた女性と私が全裸でベッドで寝てただけだ。


 なに、たまたま二人とも全裸で寝るって!せめて下着くらい着けるでしょ!


 こんな一人で考えていても仕方ない。隣で寝てる女性を起こさないことには、なにも始まらない。


「あのー朝ですよー」

あ、起きた。ヤバいなんて質問すればいいんだ?考えてなかった。


「あーおはようございます…。昨日は楽しませてもらって…」

うん?楽しませてもらって?何の話?何にも憶えて無いのよね~。


「あ、もしかして何も憶えて無いですか?まぁ仕方ないですよね。結構、酔っていた様子だったので?」

やめて話を進めないで、頭がついてこれてない、というか頭が受け入れを拒否してる。


「ふふ、どうしました?顔に何かついてます?」

いや、顔には何もついてないよ……


「えーと、どこかで、お会いしたことありましたっけ?」

どこかで聞いたことがある声なんだよね。


「えー自分で思い出して下さいよ、あやさん?」

 え、もしかして、でも、こんなピアスあいてなかったし、髪型もボブ?センター分けみたいなのじゃなくて、腰辺りまで伸びた綺麗な髪だったような。


 冷静に、冷静に、顔をよくみるんだ!

髪型や化粧は違うけど、薄い茶色の眼や顔のパーツが華そのものだ…耳のピアスも違うけど。


 なんて呑気に考察していたら何故か顔が凄い近くまできていた。


 顔をみていたら、いつの間にか鼻がぶつかりそうな距離まで、近づいてしまったらしい。


 離れようと腰を後ろに退こうと体を動かす。

あれ、離れられない?どうして…


 華が右手を腰にまわして動けなくなっていた。え、何で?次に華の左手が私の頭の後ろを撫でながら押さえていて顔も離せない。


「あのー華だよね!思い出したよ!結構、雰囲気変わってたから全然気づけなかったーごめんねー!…あのーだからさ?もう大丈夫だよ?」

 さっきまでの真顔が一転、嬉しいそうにニコニコしている。良かったーあってたよー離してはくれないけど。


「あやさん…嫌なら避けて下さいね…」

え、ちょっと待って、まず夜に何があったの?!それによっては選択肢変わるよ!


 昨日、手を出しちゃったなら責任とって受け入れるし、出してなかったら避けるし!いや別に華が嫌とかじゃなくて、女性との経験なんて一つも無くて、どうすれば良いのか分かんないだけで…


 そんな心の叫びも聞こえる訳がなく。


「んっ!」

ヤバい私の理性が、


「はっ」

良かった合わせるだけのキスだったようだ、


「え、ぅんっ!」

 まって舌入れるとか聞いてない!しかも上手いし!舌ピあるし!理性が…溶ける


「んっ…はぁはぁ」

元生徒にキスされることなんてある!?


「あやさん…私のこと、好きですか?」

そんな可愛い声で聞かないでよ…心臓が破裂しちゃう。


 しばらく黙っていると不安そうな、子犬の眼で私をみてくる。


「あやさん?んっ!」

 もうダメ、最近ストレス溜まってたし、ここで発散しても良いよね?華も勝手にキスしてくるし、私悪くないから!


 理性に別れを告げて、華の相手に集中することにする。



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