筋書きどうりの恋がしたい

@MimiKKY001

第1話 転生した。


 私の名前は黒川 早月|(くろかわ さつき)。さっき死んだ者です。というのも、ガラでも無い私が初めてオシャレなカフェに行きました。カフェの中は香ばしいコーヒー豆の摺りたての匂いが心地よく、コーヒーの味に期待します。窓辺の席に狙いを定め、空いている席はないかと探していると「カッコいい人」がいました。窓辺に座る彼を見ていると何かの雑誌の表紙かと思うほどでした。見惚れていると外が騒がしいように思えてきます。するといきなり前からトラックが出て来ました。意味がわかりません。勘のいい人ならわかると思いますがトラックが道路から脱線してカフェに突っ込んできたのです。私はこのとき思いました。これは死ぬんだろうなと、ただでさえ低い身長に力も乏しく、重量級でも無いのでおそらく潰されるのだろうな、と。このとき私が冷静なのは何故だったのでしょうか。でも、なんと無く今日死ぬんじゃ無いかと思っていました。昨日は初めて占いをしました。そうしたら死相がみえると言われました。占い師の人はとても当たると噂の人らしく、よほど自分の力を買っているのかかなり焦っていました。が、私は迷信は信じないタイプなのであまり気にしていませんでした。ただ貴方が死ぬと言われただけで15分3000円も取られたと考えると少し腹が立ってくる物です。そして今日の朝はちょうど起きた時にやっていたニュースの占いにコーヒー注意と書かれていたのでわざとカフェに行ったワケですが…まさか本当に死ぬとは。

 それにしてもここはどこなんでしょう。精神世界。とでもいうのでしょうか。周りはとても暗く私の目がどこにあるのかわかりませんが下を見ても私の身体なんてものは無く、おまけに手や足、体の感覚がないので恐らく目しか無いのでしょう。想像すると泣けてきます。それにしても外がやけに騒がしいです。…驚きました。耳もありました。ってことは頭があるということです。これは重大な嬉しい誤算です。目だけでは無く、頭だけ…想像してしまいました、あまり嬉しく無いかもです。それにしても暗いですね。ジメジメしてて蒸し暑い、こんなところに閉じ込められては、いくら引き篭もりでも辛いものがあると私は思いますよ。そんなこんなで耐えること十分。この空間に変化がありました。それは一筋の光が見えたということです。このとき私は知りませんでした。この先、外に出られた希望と外に出てしまい、知ってしまう絶望がある事には…。

 「…産まれました。元気なです。」声の主は元気そうで、恐らくこの人が産んだわけでは無いでしょう。…産まれた?誰が?…私?一度、考えることをやめましょう。考えすぎは脳に負荷がかかります。よろしくありません。よし、一度深呼吸。スー…ハー。よし、現実と向き合わなければならない時間です。目を開けて、耳を澄ませるのです。

目を開けるとそこには私の考えどうりの光景…あまり嬉しく無いですが私は、転生してしまったようです。それも恐らく身分の高いそれこそ貴族と呼ばれるものなのでしょう。産まれたばかりで視力が極端に悪くあまり顔や周りの景色をよくみることは出来ませんが、家のところどころが金や銀に光っており、周りに召使い?や、執事?もいるのでほぼ確実でしょう。それと、一つ分かったことは私を抱き抱えている髪が白く少し金に光る、長髪で美しい。女神のような彼女が、私の実の母なのだろうということです。

「良かった…良かった。」|(って言っていると思います。私はまだここの言葉がわかりません。なので憶測です。)と言い私の実の母は今にも泣き出しそうな、それでいて嬉しくて泣きそうな顔で私を抱き抱えながら私と私の父?さんを交互に見合い、嬉し泣きで号泣してしまいます。

私の父?さんはそんな私と母の姿を見て、多分「良かったなぁ、良かった。良かった。」|(と言ったと思う。)で近づき、母の背中を支えるように揺さぶります。ただ、私は体が動かせないので、私は当事者ながら部外者のようにただこの光景を見守ることしかできないのでした。ところでいつまでこの状態なのでしょう。誰か、助けて下さい。罪滅ぼしでトラックの運転手さんでもいいです。誰か誰か…。

 あれから三ヶ月が経ちました。それまでにあったことです。まず、私は頭を、動く物体の方向へ動かすことができるようになりました。そして自分で動くことができないので退屈な時間を言葉の習得に費やしました。召使いや、メイド、執事さんの言葉から聞き取り、それを頭の中で復唱します。何故ならまだ口を動かすのもままならないからです。そして、それからまた時間が過ぎました。

 生後四ヶ月です。手でものを掴んだり、口が動かせるようになりました。これで聞こえてきた言葉を復唱することができます。でも人の前で喋るなんてヘマはしません。この歳で流暢に喋るのは気持ち悪がられますから。あと、食事はお粥のような何か、|(たぶん離乳食だと思う)に変更されました。いつも食事中、目のやり場に困っていたので良かったです。

 生後七ヶ月です。やっと昨日立てるようになりました。前はヨチヨチ歩くことはできたのですが、なんか嫌だったので嬉しいです。そして片言を装って少しずつ召使いやメイドの人、執事さんとお話をしたりしています。そして得た情報はまず、この家は公爵家であり、父は公爵さま。そしてこの家はもうずっと昔の建国時からある由緒正しい家なのだとか。そして聞いた話では私の名前はアステール=フォン=イエナテーラ。イエナテーラ公爵家の長女で一人っ子。この設定は聞いたことがあります。そう、彼女、アステール=フォン=イエナテーラは乙女ゲーム(ペルソナ)で主人公の親友であり、どのルートでも死ぬ、不幸なキャラクターです。あるルートでは馬車の事故に遭い(本当は事故では無い)ましてや他のルートでは刃物を持った不審者に刺殺されてしまいます。私はこれを聞いてから夜も眠れず、三日三晩考え続けて答えを導きました。身長も体重もどうにもできないかもしれません、ですが力、即ち強さは磨くことができます。そうすれば事故りそうになったら馬車から途中で降りればいいし、不審者は薙ぎ倒せばいいのです。我ながら天才的発想。そして、一つだけ希望があったりします。それは彼女は死んでしまうキャラなのにキャラクター人気投票では主人公を抜いてのぶっちぎりの一位、何故なら、死ぬ間際まで婚約者のことを思い、そして慕い続け、なんなら死ぬ瞬間の走馬灯の訳8割型が婚約者のことという。しかもどのルートでも彼女は一途で、これに胸を打たれたプレイヤーが多く、運営にまでクレームが飛び交うようになったので、運営側は急遽IFルートを作りました。それが彼女が死なないで平和な世界でまったり暮らすというルート。もし、このルートに入れたら私は死ななくて済む。私はこれから死なないために、毎日を死ぬほど頑張りこのルートに入る事にします。

 あの誓いから四年と三ヶ月が経過しました。私は自分の弱点を無くす為、いろんな先生にいろんなことを習いました。そして弱点を無くし、アステールとして生きる事にします。そのために日々努力してきました。毎日剣術の稽古を重ね、図書館では秘密で魔法のお勉強(ゲームの中では魔法があったので試しにと図書館に行くと大当たり。沢山の魔導書がありました)。そして毎日寝る前に魔力を練り上げ、魔法の完成度を高めます。

 そして私は晴れて五歳、最初のドレスパーティの前日になりました。寸法などの最終確認のため大きい縦長の鏡の前で侍女の方に髪をセットしてもらっている中、ふと鏡を見るとやはり母譲りの艶々の白い髪で少し金にかかっており現代で言えばショートボブのような髪型である。我ながら美しい。と惚けていると背後から次女に話しかけられた。

「お嬢様の髪は奥様譲りで綺麗ですよね。」と。

確かにそうだと思い、すぐにメンションする。ちゃんと名指しで話すのも効果的だ。何故なら人は欲求がある、それも貪欲に。その欲求の中には自分を見て欲しい。というのもあるわけだ。そして私は彼女の名前を知っている。彼女の名前を呼ぶだけで私の株は鰻登りだ。そしてこの公爵邸での敵を無くす。そうしてやっと平和な日々が続くのだ。だから私は後ろの次女によく聞こえるように声を少しだけ大きく、彼女の目を鏡越しに見て言う。

「シュナさん。ありがとうございます。私はシュナさんの黒と紫の中間みたいな髪も綺麗だと思いますよ。」

私はしまったと思った。しかしもう遅い。何故なら、普通の五歳の少女の話し言葉のレベルを優に越しているからだ。しかし彼女の反応を見て分かった。大丈夫なやつだと。

「も〜、お嬢様ったら、私の髪が綺麗だなんてそんな。」

わかりやすい反応だな。これはかなり喜んでいる、このまま押せば私に明確な殺意を向けたりはしないだろう。

「いえ、本当ですよ、ただ…いえ、なんでもありません。」

よし、好奇心旺盛な彼女ならガッツクだろう。早く興味を示してくれ…。

「お嬢様、どうなされましたか?」

よし、きた。これでチェックメイトだ。

「お嬢様は…少し硬いです。せめてアステール…と読んでいただけないでしょうか…。」

得意な上目遣いで彼女を落とそうとしてみる。どうだ?やったか?

(キュン)

キター。これでまず一人。彼女は侍女達の中ではかなり上の方、なんせ専属侍女だからね、それに加えて元男爵令嬢。他の次女達からは一目置かれている。シュナを落とせば残りの侍女を落とすのも簡単。

「アステール…お嬢様。」

「アステール…じゃ駄目?」

よし、上目遣い+涙目。どうだ?

「アステール様…。」

やった。ここまで来たら上出来でしょう。あとは

「ありがとう。シュナ!」

我ながらかなりやばい殺人兵器を生み出してしまったよ。自分で言うのかなり躊躇うが容姿は抜群、声もいい。そしてあとはこの三年間、礼儀作法を教えてもらった先生とみっちり修行した笑顔。どうだ、これは堪えるだろう。

「グハッ…、」

(バタッ)

…ええっと、やってしまった。どうすればいい。どうすれば。そうだ、言い訳を探そう。

私① 殺す気はなかったんですけど。その…。

私② 勝手に倒れて、私…怖い。

私③ シュナお姉ちゃん…シュナお姉ちゃん…ねえってば…起きてよ。

…どれを取るべきか。私的には③が怒りにくくてなかなかいい案だと思うのだが、と思っていると、

「おーいアステール、入るぞ〜。」

父の声だ。…ちょっと待て、やばいこの状態を見られると言い訳に困る。なんてったって鼻血を出して倒れる彼女と椅子に座っている私。まず椅子を退け、シュナの近くに座り込み、泣くふり(というよりモロ泣いている。)状態で入ってきた父を上目遣いで見る。すると入ってきた父はすぐに状況を理解し、迅速に行動してくれた。そして、

「なんでこんな事をしたんだ?」

絶賛誤解中です。まあ、それも無理はないでしょう。なんせ後ろに倒れたものですから私の犯行以外あり得ないのですから。私はどうにかこの誤解を解く糸口は無いかと探していると父はこちらを見てきます。しかしその顔はどちらかというと悲しみに怒っているようだった。こんな顔をさせてしまった自分が憎たらしく、嫌いになりました。この事を全て打ち明けようと思い、話そうとしたとき、

「あのね、私は…「あの、公爵様、私から説明させていただきたく存じます。」」

驚いた。彼女は先ほど鼻から血を出して倒れたはずでは。しかし彼女は運ばれて行く途中で飛び出して出てきたらしい。そして父に話しかける。凄い行動力だ。

「…分かった。どういうことか、話してもらおう。」

その時の父の目は赤く鋭く光っていた。

「私が…その…。」

シュナの顔が赤くなり、声がモゾモゾしてくる。そして目線は下に下がり、顔も自然と下を向く。

「お前がどうした?」

父はそんな彼女のことを気にかけることもなく話す。

彼女は吹っ切れたかのように立ち。こう言う。

「お嬢様の可愛さに脳の許容範囲を超えてしまい、頭がパンクしてしまいました。申し訳ございません。」

と。これには思わず父も爆笑してしまい、尋問みたいな雰囲気から一転。ごく普通の我が家の空気に戻った。

「それなら仕方ないな。ああ、腹が痛い。こんなに笑ったのは久しぶりだよ。」

 私はお咎めなし、シュナは専属侍女から私の護衛兼専属という形になった。なんでも彼女はかなり強いらしい。確かにと思った。意識を失って約一分で目を覚ますのはなかなか常人離れしていると言う他ない。また、彼女の事を気に入った父が、勘違いのお詫びと親睦の印。と言う事らしい。また明日のドレスパーティの準備をした。明日のドレスパーティはこの先の将来を決定させると言っても過言では無い。恐らく多くの貴族が見てくるだろう。そのため、ベットの中で私は明日のスピーチ内容や大まかな明日の動きなどを予習しておくのだった。

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