人形寺にて。
私達の目の前にやっと見えた本堂。
私は入口へと辿り着くと中から住職であろうか声が聞こえてくる。
「おお…貴女は電話をくだされた藤野様ですか?」
「ええ…夜分に本当にすみません。」
「大丈夫です…まずは中へお入りください。」
「はい。」
私は扉越しにそんな会話をすると。
扉が開く…そして私は中へと足を踏み入れたのだ。
中はどこにでもある寺の内部。
大きな神様を祀る祭殿が飾られているが一般人的なものであろう。
私が中を見ていると住職が何処かから現れそして祭壇の椅子へとかける。
そして住職は口を開く。
「話を聞くと、友人がぬいぐるみへと入り込んだ…そんな怪奇現象…でしたな?」
「はい。」
私は予めこの話を住職へとしていた。
その為…この無理難題な話を聞いてみようと思っていただいたのである。
「我が寺では昔より人形の供養を行ってまいりました…今ではそこまでぬいぐるみであり人形でありの供養としてしか人は訪ねてきません…ですがごく稀に…怪奇現象を見た…といった話もきます…なんとか供養で事をなせる事もあったりしますが今回の話は特例でございます。」
「やはり…魂ごと…人形へと移ってしまったという話はないのですね?」
私はそう聞き返す。
すると住職は少し考えると口を開くのだった。
「その昔…といっても随分昔の事ですが時は…江戸末期辺りの頃の言い伝えですが…とある話があります…。」
◇
◇
◇
当時…民達の生活はある程度潤いそして世の中は江戸文化と言われる落ち着いた時を過ごせていました。
すると人々の間には趣味嗜好というものが現れました。
その時人形という物も誕生したといいます。
そして人形は人々に可愛がられる事になり世の中にはひろまりました。
だが…形あるものいつか、壊れる…ぬいぐるみ、人形もそれだ。
けれど人の手によりじっくり作られるというもの。
やがて取扱いには皆が気をつける事になる…だけれど大して壊れるということもある。
そして逆にとれば人よりも長く存在するのもぬいぐるみであり人形でもある。
物にはそれが長く存在すると魂が宿るという話もある。
「この寺には大昔から祀られた人形…『おりん』と呼ばれる人形が祀られている…その人形は遥か昔…人形師と呼ばれる人形を作る優しい青年がいたのです…その青年は人形がとてもとても好んでおり、来る日も来る日も人形作りに余念が無かった…すると、そんな彼は一人の女性とであったのです…その女性は肌も白くまるで人形の様な美しさをもった女性…人形師である男は恋というものに落ちたとか…女性も初めは普通に接していましたがある時…人形師にモデルとなって欲しいと言われたそうです。」
「それで??」
私の問いに住職は続ける。
「はい…初めは女もなんとなくでモデルを引き受けたとか…すると男は徐々に女に対する欲求が変わったものへと変わっていったようです。人形にリアリティが欲しくなり痛みですとか快感、そして叫びなども欲するようになったとか…流石にこれには女も狂気を感じ初めました。」
そうして暫くたった頃…女は怖くなり男に告げました。
「私はこの辺でモデルの仕事を辞めたいと思います。」
この時、男は恐ろしい顔へと変貌したという。
「い…いや…私はこれ以上…貴方にはついてはいけません…本日限りでここを辞めたいと…」
女はそう告げたという。
女はそのまま帰路へとつこうと後片付けをしていたその時。
これまで見た事ないような優しい男の変貌した姿が!!!??
「やめ!やめて!!!」
「ククク……ほらほら…逃げるんだろう??だが僕の人形になるには十分これまで君の生気をいただいてきたよ…さぁ…このまま…僕の人形に。」
「キャーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
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