地上の星

奈瑠太

第1話

薄空に待っても来ない人のいて白紙の午後を夕陽が燃やす


空低き雲の厚みの色の濃くきみに出会って好きな鈍色


神経は光り わたしを縫いとじて環状線に河を描いて


コーヒーの中の漆黒飲み干せばすぐ目の前にある行き止まり


給湯室のちいさな窓で逃がす熱 鼓動はきこえるほど近かった


欠けた月 目にはみえない星座線 ふたりをそっと桜桃にする


曇りでも神の目はある 三秒が甘く煮詰まる前のあしおと


水切り石 湖面にふれて過ぎるごと爽やかにくちびる風になる


真夜中にひらいた本の空にある一等星に赤線を引く


私小説 もう傍観者でいられないスピンオフでも光るバイパス


言葉には法定速度を設けないバッティングセンターの快音


シニカルにおどけて遊びたどり着く 新宿区役所本庁舎前


一人でも森の気配を醸し出すきみに踏み込むのが怖くなる


眠らない街の路地裏みたいだろ おいしい水に浸っていけよ


いざないのままに進めば泣きたくてでもドーナツの穴がささやく


格好悪い仕事もこなすあのひとの不敵に笑う口もとが好き


ほどほどに圧逃しても馬鹿みたく弾ける飴を舐めたくなって


反論をゆるさぬきみの不遜さが今もまぶしく瞬いている


道路灯 等間隔に迫り来てコマ送りする夜のざわめき


さよならにいつか呑み込まれる前に地上の星にそっと触れゆく

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地上の星 奈瑠太 @nalda

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