第51話 終局 参

 



 〜1月5日16:01〜


!? お前!!!!」


「逮捕……されたなぁ」


 正確には身柄確保、だとは思うけど。


「でも、ファミレスで事前にこうなることはお前にも伝えてたろ?」


「いや……、実感が湧かねぇだろ! お前が小屋から連行されてる時に、本当に佐々木捕まっちまうんだ……って思ってさ」


「別に、すぐ出てきたろ?」


「いや、まぁ……うん。そうだけどな」


 眉間に皺を寄せ、納得のいかなそうな表情を浮かべる阿久津。

 別に自分が何か実害を負ったわけでもないのに。

 よく分からん奴。




「おーい、佐々木! 阿久津!」


「「??」」


 唐突な呼ぶ声。

 後ろからだ。

 声の方向を振り向くと、太一がこちらへ向かってくる。


「おぉー、太一。遅かったな」


「理系マジで課外長いわ……。文系は早いな」


「いや、俺のクラスが特殊なのかも」


 そもそも課外に来てる人数少なかったし。

 学校としても俺のクラスは腫れ物扱いされてるし。


「阿久津はもちろん課外なんてないよな?」


「あったりめーよ。天下のバカ高だぞ?」


「羨ましい……。ひらがなで名前書ければ入学できるんだろ?」


「……、そこまでじゃねーよ!」


「一瞬、考えたな笑」


 3人でアホみたいな話をしながら歩みを進める。

 この後の

 男3人で仲良く気持ち悪く歩いているのは、全員の目的地が同じだから。

 昨日、とある状況が変わった。


 悪い方、では無い。

 むしろその逆。

 俺らにとっては嬉しい話だった。



「俺多分、喋るの中3の春以来だなぁ……」


「俺ら全員そうだろ。雅は……なんか連絡とってたらしいけど」


 情に厚いやつだなと改めて思う。

 ギャルのくせに。





 ***




 最寄りの市民病院。

 俺達の目的はそこだった。

 病院に入りーーーーーーーー。




 目的の階へ階段を上りーーーーーーー。




 そして、の前に着いた。




「……」


「……」


「……」



「……え、ちょっと誰か開けろよ」


「……阿久津」


「俺かよ!? いや待て。こういうのはイケメンがやるべきだ。太一、GO」


「ふざけんな! 佐々木頼むぞ!!」


「いやちょっと、俺も心の準備が………」





 ガラガラ。





「「「…………(雅と目が合う)」」」





「お前らうるせぇ」





「「「すいません」」」





「病院なんだから静かにしなきゃダメじゃん」




「………雅ちゃん」





 不意に。

 掠れたような声が雅の後ろから聞こえた。




「……佐々木君……達?」


「うん、何騒いでんだかね」



 病室を覗いてみると、雅の後ろには1人の少女がいた。



「……七海」



「うん、……佐々木君。久しぶり」




 病室のベッドには。





 昨日、意識を取り戻したばかりの木本七海がいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る