第14話 尾行

 


『塚原陽菜は他校の人間と関わりがある』


 そんな噂を太一は掴んだらしい。

 それを聞いた時、俺は素直に「へぇ」と思った。

 だって、別に珍しいことも無いだろ?

 他校に友達くらい俺にだっている。


 しかし、そこからは一気にきな臭くなった。



『その他校の人間と、を運んでいるらしい』



 いやいや。

 運ぶって何さ。

 クロネコヤ○ト?


 しかも、その言い方だと大体断定は出来ちゃうでしょーよ。

 白い粉的なものでしょ?

 うーぬ。

 一介の高校生がそんなことしてるかね、とも思ったが、火のない所に煙は立たない。


 そして、放課後。

 俺と太一はシンプルに尾行をしてみることにした。



 ***



「ちょっとちょっと」


「ん? どした」


「早速俺、1つの新事実に気づきました」


「何でしょうか、太一君」


「可愛い子が風上にいると、風下めちゃくちゃいい匂い」


「帰れ」


 糞の役にも立たない情報をありがとう!

 でも、ちょっと同意。

 アイツいい匂いなんだよなぁ。

 教室とかにいても匂いで分かったりする。

 やっぱ美少女って汗腺から生クリームでも分泌されているのだろうか。

 何か.....甘い。

 とにかく甘い。



「やっぱシャンプーとかか?」


「それだけじゃねぇと思うぞ。きっと色々やってんだよ.....、肌とか何やら」


 直線距離で多分50メートルはキープしながらの移動。

 まだ学校を出てそれなりにしか時間は経っていないため、そこら辺に学生がいる。

 カモフラはまだ生きてはいるが、小道とかに入ると途端にバレる可能性は上がる。


「そういや、他校っつってたけど、どこの高校?」


「工業」


「.........なるほど」


 名前を聞いて理解。

 吉丘よしおか工業高校。

 通称「よしこー」。

 決して、よしこさんを呼んでいる訳ではない。

 俺らからしたら工業で通じるから、別にいらん情報である。


「工業の奴と関わりがあるのか.....」


 さっきの太一の噂が途端に信憑性を帯び始めてきた。

 工業を一言で説明すると、.....世紀末。

 某漫画をご存知であれば「ヒャッハー!」的なものを想像した人もいるかもしれない。


 しかし、その想像のままで間違いない。



 ヤンキー漫画の舞台と言っても過言ではないほどの不良の掃き溜めで、勢力争いやら抗争やら物騒な話が聞こえてくるのも珍しい話じゃない。



「工業ってさ、確か.....」


「あぁ、去年何人かパクられてる」


 そう。

 実際に


 .....おいおい。



「.....元カノが薬に関わってたって話、ネタになる?」


「.........笑えねぇ」


 ですよね。

 いくらなんでもそれは.....。

 最悪の展開すぎではなかろうか.....。



「まぁ、あくまでも噂だ。それを今確かめて、っと奴さん曲がったぞ」



「.......!」



 陽菜は人通りのない道へと進行方向を変えた。

 うーむ。

 これは、掴んだ情報次第では、社会的な抹殺だけでは済まないかもな。



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