結婚。パピコのフタ。ニンジンの乱切り群。

 友達から、奥さんとの写真が送られてきた。

 フォトウェディングと言うのか、和装の写真も洋装の写真もあり、それぞれ良い感じのスポットを背にしたツーショットだった。このためにロケに出向いたのだろう。

 気付いたとき自分でも驚いたのだけど、その写真らを眺めながら私はニヤけていた。

 友達夫婦の晴れ姿というのは、こんなに素敵で心打たれるものなのかと、衝撃だ。しゃらくささを一ミリも感じない。


 大学四年のとき、この友達と大学そばの喫茶店でお茶を飲んでいた。普段は専ら学食でお喋りしているのだけど、たしか日曜日か何かで食堂が休みのため喫茶店に行ったのだった。

 そこで彼がため息をつきながら「ある女性から京都観光に誘われたんだよね……」と切り出した。明らかに乗り気ではない様子だった。

 訊けば、その女性は一緒に着物で観光地を巡ることを望んでおり、彼はそれが嫌だという。

 まあ私も、着物をレンタルして京都を巡るというような行為に、懐疑的というか警戒心が強いタイプではあるから、彼が乗り気で無い気持ちは正直、かなり分かった。そう前置きしてから、相手も勇気を出して誘ったのだろうから行ってみたら? と会話のバランスを取ってみる。

「うーん……」彼はしばらく悩んだ末、「いやダメだ、ダメだ。着物で京都なんか回ったら、この4年間社会学やってきたのが全部無駄になる!」と言い出して可笑しかった。そのあと、本当にその誘いを断っていた。


 こういう様を間近で見てきたからこそ、ウェディング写真からもしゃらくささを感じなかったのだろうか。

本当に2人とも末永く、という感じである。


 それにしても結婚。

 すごいな。異なる文化の持ち主が暮らしを共にするとは。

 パピコというアイスがある。牛乳瓶を模した容器で2本入り。フタをちぎってから吸うように食べる。

 そのフタの部分にも少しだけ、ほんの一口分のアイスが入っていて、私は毎回、ちぎったフタの一口分もちゃんと食べるが、これを食べずに捨てる人だっているかも知れない。

 もし将来、パートナーができたとして、その人が躊躇なくパピコのフタを捨てたらビビるだろうな。そしてその人も、パピコのフタを一度口にしてから捨てる私を見てビビるだろう。


 にんじんを乱切りしているときに、そのうちのひとかけらが床に落ちたとして、私ならそれを拾い上げてから水道水で軽く流し、また乱切り群の中に戻すだろうけど、それをそのまま捨てる人もいるだろう。「落ちたにんじんを戻すな」と言われてしまうかもしれない。


 こういう文化の違いを絶えず擦り合わせるというのだから結婚はすごい。



 なんでパピコのフタの話をした後に、にんじんの乱切り群の話をしたのだろう。どちらかだけで事足りるじゃないか。似た話を違うパターンで2つも。

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