Lv.10「親は仕事でいないから」




(玄関の鍵を開ける)

(玄関のドアを、ガチャっと開ける)


「親は仕事でいないから」


「2階の、つきあたりの部屋! テキトーにくつろいでて~」


(階段を昇る足音)

(ガチャ、とドアを開ける)

(少しして、主人公が階段を昇ってくる足音)


「お茶とお菓子もってきたー。あ、そのへん座って」


「え、女の子の部屋、はじめて?

 アタシも……男子入れるのははじめて」


「……暑いね! クーラー入れよう」

(リモコンの、ピッという音)


「あー、のどかわいたっ」

(コップをストローでかきまぜ、からんと氷の音がする)


「……ダメだ。

 なんかキンチョーするから、筋肉さわらせて」


「筋肉さわってないと、がもたない。

 上、脱いで」


「……今日はやけに素直じゃん?」


「この前は前鋸筋ぜんきょきんだけで、背筋はいきん見れなかったから。

 後ろ、向いて」


「……すごい。広背筋こうはいきんが、くっきりわかる。

 脊柱起立筋せきちゅうきりつきんも発達してて……

 僧帽筋そうぼうきんの三角も、ちゃんとわかる」


「ねえ、脊柱起立筋せいきちゅうきりつきんに、指そわせていい?」


「絶対くすぐったいよ。ゴメンね」


「はー……すごい。背骨の感触も、わかる。

 やっぱ、男の子だね。筋肉のスジが、太くて……

 あぁ、もう。……かっこいい、もーダメだ」


(主人公が、がばっと後ろから抱きつく)

「……びっくり、した?

 キミの背中がカッコよくて……抱きつきたくなっちゃった。

 ……この前の、しかえし」


「(後ろから密着して、囁くように)

 背中越しでも、ドキドキしてるの……わかる?

 キミ、服着てないもんね」


「アタシ……キミの筋肉がすきなんだって思ってたけど、ちがうみたい」


「キミの筋肉だから、すきなの。

 キミのことがすきだから、キミの筋肉もすきなだけ」


「いつのまに、こんなにすきになっちゃったんだろ」


(「俺」が、すこし間を置いて肩越しに振り返る。

 彼を見上げ、主人公は微笑む)


「(首をかしげながら)

 ……ん?

 ふふ、……チュー、したくなった?」


「(うなずいた「俺」に対し、目を閉じて顔を上げる)

 ……ん」


(ちゅ、というリップ音)


「……えへへ。しちゃった。ふふっ」


「……ね、もっかい、しよ」


(ちゅ、というリップ音)


「(背中側から、見上げながら)

 ふふ、幸せ? アタシも、幸せ。

 ……ぎゅってしたいの? いいよ」


(もぞ……と体が擦れる音。

 向きを変えて、正面から抱きあう)


「キミのカラダ、熱いね。

 ……イヤじゃないよ。アタシ、キミの体温も、肌も、ぜんぶすきみたい。

 (大胸筋に頬をすりよせる)」


「あの、さ。

 キミはほんとに……アタシでいいの?」


「だって、ただの筋肉オタクだし、筋肉には目がないし、勉強できないし、これといって特技もないし……」


「えっ、かわ、かわいい? アタシが?

 そ、そうかな……そんなの、はじめて言われた」


「えっ?! ほ、他の子の筋肉に浮気なんてしないってば!

 筋肉さわりたいのはキミだけだし……

 筋肉がなくても、キミといっしょに、いたいんだもん」


「だから、ね?」


「クセつよだけど、これからも……あきれずにそばにいてね」


「ね、もっかい……したいな」


(ちゅ、というリップ音。

 ひとつ間を置いて、ちゅ、ちゅ、ちゅ、と繰り返す)


「ん、……首は、ダメだよ。

 っ……だめってば。

 ……だって、ガマンできなくなっちゃう」


「……キミもやっぱ、男の子なんだね。

 ふふ、イヤじゃないよ。そんなとこもかわいい」


「……でも、今日はチューまで。

 こんなかわいいカノジョ、一気に食べちゃったらもったいないでしょ?」


(間をおいて、服が擦れあう音ののち、ちゅっというリップ音)


「……ふふ、いい子いい子。

 さ、起立筋きりつきんの触診のつづきやろっかな」


「あはは、まだ離したくないの?

 キミ、そんなにアタシのことすきなんだ」


「……アタシも、すきだよ。筋肉もキミも、だーいすき!」






 Lv.10 背筋 Clear!!!

  Congratulations,Misson Complete!!!


       Next ➠ Bonus Muscle 僧帽筋




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