Lv.4「え? たまには大きい筋肉を触ってほしい?」




(放課後。生徒達の声が、遠くに聞こえる)


「え? たまには大きい筋肉を触ってほしい?」


「ほほ~う? とうとうキミも、触診されることによろこびを感じはじめたわけだね?

 よかろう、よかろう。どこを触ってほしいんだい?」


上腕二頭筋じょうわんにとうきん

 却下。あんまりモリッとしてるの、好きじゃないの」


下腿三頭筋かたいさんとうきん

 却下。見え見えの強さに、情緒を感じない」


大腿四頭筋だいたいしとうきん

 ……しかたないなぁ。じゃあ、大腿直筋だいたいちょっきんだけ触ってあげる」


「知らないの?

 大腿四頭筋ってのは、4つの筋肉で構成されてんの。その中のひとつが、大腿直筋。

 足の付け根から、膝蓋骨しつがいこつを経由して……ひざの下までつながってる」


「あ、気付いた? そうなの!

 筋肉のついてる場所、だいぶ覚えてきたんだー♪

 筋肉セミプロくらいにはなったかな~」


「じゃあ座ってー!」


(ガタガタと、椅子の音)

「で、ひざを伸ばして、力入れて。

 もっともっと。……オッケー、そのままね」


「……わー、すごい。膝蓋骨しつがいこつがくっきり……

 膝蓋靭帯しつがいじんたいも……硬くて、太い。

 やっぱ男子のカラダは、ちがうね」


「うわ、うわ、筋腹きんぷくヤバいじゃん!

 こんなに盛り上がるの!? キミ、帰宅部じゃなかった……!?」


「へぇ、昔スポーツやってたんだ。だからかぁ……

 この太ももの上の盛り上がり、まさに大腿直筋だいたいちょっきんって感じ……

 あー、すごい。上にいけばいくほど、筋腹が……」


「っ!! ご、ごめん。つい夢中になって、付け根までさわっちゃった……

 事故、事故! ゴメンって!」


「え、大腿直筋の評価……?

 あー……思ったよりも、魅力的、でした。

 って、なに言わせんの!」


「は!? アタシの触らせろ!?

 絶っっっ対ムリだから!!!!」


「アタシばっかりずるいって……キミは別に筋肉キョーミないっしょ!」


「んん~、じゃー……膝蓋骨しつがいこつ、だけなら」


(ガタン、と椅子に座る音)

「あ、ごめん。もう1コ椅子持ってきて。そこに足のせるから。

 ……サンキュー」


(正面の椅子に足を乗せる)

「さ、アタシの膝蓋骨をたーんと楽しみなさい」


「そう。膝蓋骨って、大腿四頭筋だいたいしとうきんの力が抜けてるときは、ユルユル動くんだよね」


「あはは、くすぐったい。

 膝蓋骨、めっちゃ動くね。おもしろいーい」


「でさ、大腿四頭筋にギュッて力入れてみるとさ。

 ……ね? 全然動かないでしょ」


「え! キミも筋肉にキョーミわいてきた!? ホントに!?

 うれしい~! 筋肉仲間じゃん! やったー!!」


「じゃあ……また、しようね」


「ん? なんかキミ、顔赤いよ? 大丈夫?」


「え、アタシがヘンなこと言うからって? ヘンなことなんて言ってなくない?」


「ねぇ、膝蓋骨みてたら、チキンナゲット食べたくなっちゃった。

 帰りに食べにいこーよ」






 Lv.4 大腿直筋 Clear!!!

       Next ➠ Lv.5 棘下筋

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