第9話 VS地竜【1】

「すーはー」




俺達はボス部屋の前で深呼吸をした。初めてのボス戦である。がちがちに緊張するのも無理はないと思いたい。




ボレアスさんによると、ボスは『地竜アースドラゴン』。とにかく強いらしい。




体感レベルは30~40のようだ。今の俺が10レベル、ケルトが12レベルであることを踏まえると、かなりの強敵であることには間違いはない。




「それじゃあ行くか」


「おう!」




俺は重厚な扉をゆっくりと開けた。するとそこには、大きな空間が広がっていた。




50メートル×50メートルぐらいだろうか?とにかく広い。




少し薄暗いが、松明が周囲に点在しているので明かりは不要だろう。




数歩進むと、広間の中央が赤く光りだした。同時に、後ろの扉が勝手に閉まった。元には戻れないらしい。




「来るぞ!!」




赤く光った場所から大きなドラゴンが出てきた。体長はおよそ3メートルと言ったところだろう。体は黄色く、鋭い爪と真っ赤な目、それに大きな翼を持っていた。




「グワアアアアアアアアア!!」




ドラゴンが激しく咆哮した。恐ろしいほどの覇気を感じる。スキルを使用しているのだろうか?俺は思わず足がすくんでしまいそうになった。




「しっかりしろ俺!とりあえず先手必勝だ!『暗黒砲ブラッディカノン』!」


「その意気だぜ!『圧殺潰し《ギガントプレス》』!」


「グワアアアアア!!」




俺はドラゴンめがけて魔法を放ち、ケルトはその隙に右方向からドラゴンに接近していった。




俺の杖から物凄い出力の魔法が飛び出した。いわゆる極太レーザー光線みたいなものだ。魔法は見事、ドラゴンに直撃した。




しかし、ドラゴンはまったく怯まず再び咆哮し、ケルトの足を止めてしまった。これでは追撃ができない。




「くそっ!頭では効かねえって分かるのに、どうしても足が動かなくなっちまう!!」




おそらく生物的な本能がそうさせているのだろう。『牽制けんせい』よりも上位の威圧系スキルによってケルトの歩みは完全に止められてしまった。そこで俺が代わりに魔法を放つ。




「『暗黒砲ブラッディカノン』!」




再び、紫色の極太レーザー光線を放った。威力で言えば、オーガをぎりぎりワンパンできる程度なのだが、二発くらってもピンピンしている。




「グオオオオオオ!!」




俺達が決定打を与えられずにいると、ドラゴンの方から俺に向かって突進してきた。どうやら遠距離攻撃は持ち合わせていないらしい。




「動けなくともこれなら!『地震アースクェイク』!」




ケルトが地面を強く踏みつけ、地震を発生させた。しかし、ドラゴンの速度は減少しない。どんどんこちらに迫ってくる。




「『火炎弾ファイアボム』!」「『暗黒砲ブラッディカノン』!」




俺は杖から火炎弾を、杖を握っていない左手からは暗黒砲を放った。これでも速度は落ちていない。見た感じ傷一つすらついていなかった。




「グオオオオオオオオオ!!」


「くっ!『魂喰らい《ソウルイート》』!」




効いてくれよという思いを込めて、今俺が持つ最強スキルを発動させた。するとドラゴンは地面から飛び立ち、再び俺から距離をとった。




着弾速度が圧倒的に遅い『魂喰らいソウルイート』は、見事に外れてしまったが俺は大きな成果を得ることができた。




「さてはお前『魂喰らい《ソウルイート》』効くな?」




俺は口角を少し上げて、ドラゴンに語りかけた。




そうして俺はこの時、勝ちを確信した。

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リアルで全てを失った俺は、ゲームの世界で無双する 〜ブサイクですが何か?〜 三茄子 @sannnasubinu

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