第20話コンビニでのヒトコマ

 夏の暑い最中サナカ、わしは家の近くにあるコンビニに立ち寄り、アイスクリームを買おうと歩きながら―その時は考えておった。


 だが、いざコンビニのドアを潜ろうとした瞬間、ずっとそこにいたのかと思うような服装をしたみすぼらしい男性が立っているを確認した時点で、気が変わった。


 わしは早足でパンコーナへ向かい、適当に見繕ってレジで会計を済ますと、これまた急ぎ足で彼のモトへとキビスを返す。


 そして、彼の目の前に購入したパンを差し出したまま、黙って事の成り行きを見守っていた。


 やがて、彼は察したのであろう。


 わしの手から恐る恐るパンを受け取り、軽く一礼してその場から去っていく。


 わしも彼の姿が視界から消えるまで見送り、そのまま帰路についた。


 後日、彼の噂を聞いて、ふと遠い昔のことを思い出す。


 わしが生きた時代にも、形は違えどこういった事例はあった。


 だが、今とは違って皆が同じような生活を送っていた為、助けるという余裕がなく、結局野放し状態になってしまうのである。


 彼は、事業に失敗して全ての財産を失くし、今はボランティアの人達によって、命を繋いでいるようだ。


 正直、いつ誰にでも起こりうる出来事故、何も言うことは出来ず……


 他人事ではないという気持ちと、心の片隅でどんな生活を送ってきたのかさえ知らぬ者に対する少々の不満が入り交じったわしは、実際何をしたかったのか分からなかった。


 ただ、今後彼に幸せが再び訪れることがあるなら、次は離さない方法を身につけと願う。てほしい。


「こんな大切な事を感じられるのは、わしが幸せだという証拠だな」


 わしは、恐らくこの者の人生を知ろうとしないヤカラ達が流す噂を聞き流しながら、心の中でそう呟いた。


お仕舞い😁


※多分、これで100話目です☺️

お読み頂き有難うございます。


令和3(2021)年7月24日15:20~19:50作成


Mのお題

令和3(2021)年7月24日

「コンビニが舞台の物語」





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