第5話 一緒におばあちゃんになろう

 公園で拾った黒猫は菜那の提案でおこげと名付けられた。全身真っ黒の猫だからおこげらしい。私はいちおう地域の動物愛護協会に電話をして、その猫が地域で飼われているかを確認した。どうやら野良猫だったようで、飼うのは問題なさそうだ。

 次の休日におこげを動物病院に連れていき、ワクチンやら虫下しの薬をもらってきたりした。飼い猫の登録を区役所ですませて、ペットショップで必要なものを購入した。


 おこげが来てから、我が家は少し雰囲気がかわった。たぶんだけどいいほうに変わったと思う。いつも青白かった菜那の顔色がわかりやすいぐらい良くなっている。おこげがいることによって、彼女の中でもなにか変化があったのだろう。

 気がつけば私達はおこげの話をよくするようになっていた。

 今までは半日は寝ていた菜那の睡眠時間が短くなってきていた。それでも十時間は眠っているが。おこげの世話が菜那に生活の活力を与えているのだろう。何かしらの負荷があるほうが、人間はいいのかもしれない。生活にはりあいというものがきっと必要なのだろう。


 ある日の夕食、私は菜那が作った唐揚げを食べていた。菜那の唐揚げは生姜がきいていて、ご飯がすすむのだ。菜那がいて、おこげがいて、こんな生活がずっと続けばいいなと私は思った。

「ねえ、菜那。一緒におばあちゃんになってくれる」 

 ふと、なんとなくだけど私は菜那にきいた。

「なにそれ、プロポーズみたいね」

 菜那は言い、おもちのような白い頬に手をあて、少し考えるそぶりをみせる。

「いいよ、ずっと一緒にいて、おばあちゃんになって菜緒ちゃんをみとってあげるわね」

 菜那はふふっと微笑む。

「なにそれ、私が先に死ぬ前提なの」

 私は久しぶりに心のそこから笑った。


                                   終わり

 

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私の愛する眠り姫 白鷺雨月 @sirasagiugethu

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