第13話

「ねぇ七海。まじめなお話があるの。」


そう言って母は娘に声を掛けた。


「なぁに?お母さん。改まって。」



何かを口に出そうとしては口を閉じて、視線を泳がしている。そんな母を見て娘は努めて明るい声を出しながらこう言った。



「そっかぁ。私もう死んじゃうんだね。」



「大丈夫だよ。分かってる。分かってる。分かってるけど…おかしいなぁ。まだ死にたくない。」



娘の顔は笑っているはずなのに涙を流していた。



「大丈夫。貴方は強い子よ。死なないわ。絶対に大丈夫。また元気になったら学校にも行って友達もたくさん作るの。」



それは母の何よりの願いであり、娘の何よりの憧れであった。



しかし娘は首を振りながら先ほどまで泣いていた涙を隠して、何やら覚悟を決めたような顔をする。


「お母さん。私のお願い聞いてくれない?今しかできないお願い。」


「なぁに?」



「私、文化祭に行きたい。」



その願いはこの親子にとってとても難しい、でも世界一叶えたい思いであった。

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