第九話ー本心ー


魔の手は、由菜だけに伸びていた。しかし、"作戦"で海里たちにも魔の手が伸びることになる。


相変わらず、心子と由菜が好きなゲームのことで話していた。

「え?イベントtop10000⁉︎すご!」

「…別にそんなことないよ。エキスパしまくったらいけた」

「私も頑張ってみよっかなー…」

「心子ならいけると思うよ」

だんだん即答や名前を呼ぶことも増えた。信頼の証は、少しずつ目に見えてきた。

すると由菜は後ろで見守っていた海里をいきなり見つめ

「…話わかんなくてつまんないでしょ?別に無理に此処いなくてもいいよ」

気遣い。彼女の特技だ。みんなが過ごしやすいように。全員が思い思いに過ごしたらいい。これが由菜の想いだった。

「え?俺そんなことないで?由菜が笑顔だったら嬉しいし…」

言った途端、心に焦りが生まれた。

(やばい俺やらかした‼︎)

心子が目で

(何してんの⁉︎)

と訴えてる。そんな心配と焦りは由菜からしたら違う感情だった。海里の方を向いたまま微笑み

「そっか。」

とほんの少し暖かく、本心が若干混じっている声が聞こえた。こんなふうに話してくれたのは初めてだった。笑いは、本心だった。海里も微笑み返し、

「無理に笑ってる顔よりもそんなふうに本当の笑いの方が俺は好きやな」

といった。由菜と心子の目が見開かれ、

「「…え?」」

見事にハモり、顔を見合わせた。

「心子…え、あれどういう意味?」

「私もわからん…」

「ま、いっか」

また由菜が少し微笑んだ。本物の笑いだ。海里と心子は目を合わせ、(よかった)と通じ合った。

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