第4話「従者シアの手記」


 

■■従者シアの『仕事についてのメモ』より抜粋■■



 

〇お仕事の内容

 

依頼の管理、書類作成、予定の把握、財産管理


→私自身の問題についてお話しし、戦闘やそれを伴う仕事には従事できないことをご了承頂いた。また、常にお側にお仕えする必要はなく、事務的な仕事であれば、自宅で仕事する日があってもよいとのことだった。その他、ターナカ様より、以下の内容についてお願いされた。


・「遅刻癖があるので注意してほしい」とのこと

 

・「浪費癖があるので報酬の一部は貯蓄に回してほしい」とのこと

 

・「人の名前を忘れやすいので代わりに覚えておいてほしい」とのこと

 

・「表情がない時は大体考え事をしているだけで、怒っているわけではないので、気にしないでほしい」とのこと

 

・「僕がミスしたときにちゃんと謝らなかったらぶん殴ってもいい(?)」とのこと

 

・「パーティメンバーの僧侶イドの素性については詳しく訊ねないでほしい」とのこと


 

※勇者ターナカ様について※

 

 近年、この世界に召喚された勇者の中でも特に変わった気風きっぷの方らしい。


 各地の勇者には王都より異名が与えられるが、ターナカ様は【操奇そうき】という二文字を与えられている。その名に違わず、一部悪評も聞かないでもないが、彼に私を紹介してくれた友人曰く「狂人以上に狂人じみた一面もあるが、慣れてしまえばただのいい人」とのことだ。


 実際に会ってみた第一印象として、特に変わったところのない穏やかな好青年だと感じたが、話をするにつれ、表情や考えが読みづらいと感じる場面もたしかにあった。


 そもそも私のような【魔力詰まり】を雇ってくださるという段階で警戒心があったが、そのことについてターナカ様は「僕も他人を信頼するのは苦手だ」とやや斜め上からの発言をされていた。


 やはり噂通り偏屈なお人なのだろうか? 連れ合いの僧侶様もイデイン族の外見的特徴を持っていた。


 「奇人」という話が事実であれ、なにより彼が、私にとってよき主人であるといいのだが……。

 

 

↑イディア暦822年 追記


 結局「ただのいい人」だった。


 この時はこんなふうに考えていたのかと思うと感慨深い。おそらく彼のちょっとした「不器用さ」が大げさに見えていたのだろう。


 慣れてしまえば、結構かわいらしく見えてくるぞ!

 



▲▲~了~▲▲

 

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