第27話 月7

 やはり満月の夜であった。深夜に喉が渇き1人が給湯室に向かった。ガス湯沸し器から空のポットに熱湯を注いでいると微かに耳に響いた。


 「コツン、コツン・・・・・」


 確か以前に『それ』を見た者は、ヒールで歩くような足音を聞いたと話していたのを思い出した。


 霊や化物の存在など全く信じない男であった。その類の話を聞くとむしろ一度見てみたいといつも思っていた。


 いつの間にか屋上に続く扉が開いている。静かに音を立てず階段を上る。屋上の扉から蒼白い月明かりが射し込んでいた。扉を開き屋上に出る。


 周りを見渡すが人影など当然無い。屋上の転落防止柵から、ガッカリしながら夜の街を見下ろした。


 しょうがねえな戻るかと振り向いた目の前30cmの近くに、蒼白い顔の髪の長い女性が・・・・・


 翌日、以前に『それ』を見た者と二人で清掃のオバちゃんに話したのだが。


 「屋上の鍵は私が預かってるから、私以外に屋上のあの扉は開けられるはずがない」と笑っているだけであった、


 企画会議で開発部のリーダーは、給湯室でオバちゃんとよく話しをする女子社員が耳にした話を思い出していた。


 「このビル、深夜に出るらしいですよ。清掃のオバちゃんが女子社員に話していたらしいんですよ。三浦、お前霊感が強いんだよな」


 「霊感が強いかどうかはともかく、満月に瘴気が満つるのは確かです」


 「社長もたぶんご存知かもしれないけど、このビル出るらしいですよ。最近じゃあウチの社員もほとんど知ってますから」


 「ああオレも噂では聞いてるよ。たぶん知り合いの不動産屋が言ってた事故ものとは、それだったんだな」


 「じゃあ社長、どうでしょう。今度の新ゲームのテーマはそれで」


 「ゲームで幽霊かお化けが出てくるのか? 面白そうじゃないか。それでタイトルはなんにするんだ?」


 「三浦の話じゃあ、満月になると瘴気とやらが強くなるみたいなので、満月か月でどうでしょう?」


 「よし、その線でいってみるか。じゃあゲーム設計、シナリオ作りには三浦、お前がキャップで頼むよ」


 社長からの指令に初めは固く拒んでいた三浦も企画会議の流れに逆らえず、キャップは三浦で期間は3週間で作業を進めることとなった。


 思いの外、作業は順調に進み、設計、プラグラミングを済ませ試作品を企画会議でチェックを行うこととなった。


 なぜか満月の夜であった・・・・・


 企画会議メンバー全員が会議テーブルの上にPCを並べて、インストした試作品を三浦の説明を聞きながら確認。


 主人公がゲーム作成会社の中で仲間と協力しながらゲームを作成していくロールプレイングゲームである。


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