ダークな近未来SFの良作。あるいはハイパーヤンデレ博覧会。とてもよい……!膨大な知識をもとに作り込まれた世界観もさることながら、主要な登場人物ほぼ全員が何かしら誰かしらに異常な執着を持ち、命懸けでヤンデレを拗らせている。その個性的なキャラクターたちも、主人公の"エンプセル"と出会って一様に勝手に狂っていく姿がまた凄惨。インモラルを地で行くが故のタガが外れた描写と熱は、ここでしか見られない。ゴールデンウィークの入りに夜通し一気読みしてしまいました。
汚染された地上、地下都市、完全食バー、アンプルとカプセルの食事。これらの単語にピンときたらぜひこの作品を読み進めて欲しい。戦争により異形うろつく地上から地下へと移った人々。しかし、主人公の美月はその記憶を持たない。なぜなら、彼女はある男の孤独を埋めるため、都合のいい存在として造られたから。緻密な表現力で描かれる近未来の世界は、リアルの一言。本当にその世界にいるかのような錯覚すら覚えます。ダークでグロテスクな世界にどっぷりと嵌まりたいあなたにオススメの作品です。
人類が、荒廃した地上から地下へと生活の拠点を移した近未来を舞台に、題名にもなっている「エンプセル」を中心として描かれる愛憎劇。目覚めた部屋はほんの少しだけ、いつもと違っていた。不可思議な違和感から幕を開ける物語は読み進めるにつれ、どんどんと印象を変えていきます。ミステリーやSF、そしてモンスターホラーや恋愛模様など目まぐるしく変化しながらも、惹きつけられる文章と構成を是非。美月が抱く感情、そして美月へ抱く感情を「愛」と呼ぶのは相応しいのか。考えさせられる物語です。
高校2年生の美月は自分の部屋で目が覚める。見慣れた景色なのに何かがおかしい。何もわからず混乱している美月の前に現れたのは旦那だと名乗る怪しげな男。彼が言うには今の美月はオリジナルの美月ではなく創られた存在だと言う。見たこともない巨大な生物、地上にいなくなった人間、そして地下世界。謎の多い近未来の世界で繰り広げられるSFダークファンタジー!是非読んでみてください!
ダークのなかに潜む人間の情。憎しみと恐怖の中にある、未練と依存。世界観は怖いのに、グイグイ竹流と美月(オリジナルをもとにつくられた人工生物)に引き込まれてしまいました。これは、愛…? いやいやいや。ぜひ皆さんに読んでもらいたいです!