それにつけても金の欲しさよ

逢坂 新

信じよと握るその手が愛しくて頬に当てがう彼の温もり


血を吐けど白い病室我がひとり彼が来るのをただじっと待つ


嘘をつくすがりたいのに平気よと彼の重荷になりたくなくて


待ち人の影宿る風気のせいで啜り泣けどもまだきみは来じ


友は云う金かき集め逃げたのだそんなひとではないはずだけれど


夜の風にきみの匂う恋の夢目を開けたれば咳は止まらじ


退院の夏のその日に家は無く更地になった庭木生垣にわきいけがき


れきの上ひとり座りて彼を待つ夕餉の支度はできないけれど


便り来る頬伝う水そのふみの異国の地にて彼を見たとの


信じてるあのてのひらとその傷と骨の硬さと愛の言葉を

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