地球最後の日もドライブを

陽澄すずめ

地球最後の日もドライブを

エンジンの回転数も覚束ない借り物めいた心とからだ


クラクション鳴らすわけでもなく単にひとり悪態つくだけの日々


ホテル代ケチって沈む助手席は車内灯のヒビがよく見える


「交差点過ぎたら」「コンビニ過ぎたら」先のばしする車線変更


今日もまたその場しのぎで通過する私を感知してよオービス


パーキング見つけられずにぐるぐると二酸化炭素を吐きつづけてる


エンプティマークの見えない人たちが燃費の話ばかりしている


進むことも戻ることもできなくて乱反射したハザードランプ


ブレーキとアクセルを踏み間違えて自分ちの壁やぶるみたいな


窓から窓へぬける風しみついた煙草のにおい吹き飛ばしてく


レギュラー満タンカードで払いますクーポン持ってません人生


腹が鳴る運転席の窓ごしに行きかう0円スマイルたち


この空き地なにがあったところだった?ドーナツの穴みたいな記憶


歩行者と対向車両と自転車と刺客ばかりで死角ばかりだ


いつできたのかも知らない、いつまでもそのままにしている、擦過傷


「約束の時間、飛ばせば間にあうよ」空っぽの後部座席の声


肝心の最後を教えてくれないね案内終了その後のことを


虹の橋この国道を右折してどこか行っちまえたらいいけど


水滴を右へ左へふりわけて黄信号すら露わにしてよ


雨の日も雷の日も晴れの日も地球最後の日もドライブを

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