第5話

「んー思ったより悪趣味な話題も扱ってたんだな」

学校から帰り家に戻るとパソコンを立ち上げ、YouTubeを開く。

普段なら時間をとんでもなく浪費してしまうため見ないようにしているが今は趣味ではなく瀬川のチャンネルを調べるためだから仕方がない。

しかし瀬川の動画を今まで見たことがないので検索するためのワードが思い出せない。「瀬川」で検索したが明らかに違うであろうスポーツ選手や歌手しか出てこなかった。


諦めて瀬川やもう参加していないサークルの先輩のラインを遡ってみる。

思い出す限りでも瀬川とはYouTubeの話題を上げたことはなかったし実際一年以上遡っても答えはなかった。

先輩とはそもそももう連絡を取っていない。顔合わせだけ出たサークルで俺も瀬川も合わずにすぐに行かなくなったがラインは交換したし、もしかしたら瀬川のYouTubeの話もしたかもしれない。


先輩のアカウントを探しチャット欄を確認したがお目当ての情報はなかった。チャットのやり取り自体が全部でたったの5回だけ。遡るという作業すら必要なかった。

「こうなったらやけくそだな」

聞く限りでは瀬川のチャンネルは古今東西のネタを扱っているうえ再生数も多い。あまり最新すぎる話題だとヒット数も多くなるだろうから一年ほど前の時事問題、出来事あたりで検索をかけてみる。


去年でも大きな話題だとヒット数はとんでもない数まで増えてしまう。しかしマイナーだとそもそも俺自身がわからない。

それにページを送っていくと検索ワードとは関係ない動画まで出てくる始末。

「どういうアルゴリズムなんだろうな」

関係ない動画ばかりで諦めようかと思ったとき一番下にある動画のサムネイルに目がとまった。

麦わら帽子にサングラス。それに隠れていない口元は瀬川そっくりだ。

「アイガッテイッ」

「なんて言ったんだ?」

動画を開いて声を聴いてみると少し声を変えているのだろう、違和感は覚えるが瀬川の声だと言えるだろう。


開いた動画は日本の名作と呼ばれる小説の概要を一分で説明しそれに加え当時の評価や時代情勢なども説明したものだった。

「結構勉強になるな、でも瀬川絶対読んでないだろ」

棒読みでは決してないが台本を読んでいて作品そのものに思い入れがあるとは少しも感じなかった。


チャンネルページに飛び、最新の動画を調べてみると最終投稿日は二週間前。

的場という男に会った日が最後となっている。動画はほとんど毎日、週に平均5本投稿されていることを考えるとチャンネル更新は中絶している。

「やはり瀬川が……」

沈んだ気分のまま最後の動画を見てみると、「人気YouTuberの炎上・暴露」というタイトルのものだ。

YouTubeに疎い自分でもいくらか知ってる名前が出てきて過去の炎上騒動に言及している。

「んー思ったより悪趣味な話題も扱ってたんだな」

本当に色々なテーマを扱っているようだ。これで100万人以上のチャンネル登録者数を稼ぐのだから需要があるということなのだろう。


ふとある考えが頭をよぎった。

「もしかして的場という男はどこかのYouTuberの事務所に所属していてあるいは弁護士で瀬川の挙げた動画について文句を言いに来たのではないか」いや、的場の態度はどちらかというと友好的だった気がする。

瀬川が青ざめていたことを考慮すると腹芸なのかもしれないが。

「なんにせよこれじゃなんにもわからないな」

仕方ないので最後の手段をとることにする。

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