13 異世界旅行日記 #3

「貴様、どこから侵入して来た?」


お決まりの文句で始まるこの出会い。

魔族領内を人間がウロウロしてるんだ。そりゃ当然か。

ここは林の中。よくもまぁ、オレを見つけたものだな。

相手は3体。うち2体は装備からして手下のようだ。


「あのぉ、観光客です。」


大きな声で伝えるも返って来た答えは


♪ヒュー、ヒュー


火炎魔法攻撃による手厚いおもてなし。

どうやら対話する気ないらしい。

なので、いつものように魔法の鎖(くさり)で3体同時に両手・両足を拘束。

一瞬で鎮圧できた。


今回のオレは、いつになく興奮気味である。

だってリーダーが女系だったから。

急ぎ足でそいつらの元へと駆け寄る。


「そなた、勇者か?」

「ここから生きて出られると思うなよ。」

「何者だと聞いておる。」


これもまたいつものお決まり文句。

自分が不利な状況にも関わらず、

そんな強気な発言ができるもんだと毎回感心させられる。


「何をジロジロ見てる!」

この女魔族、スタイルいいな。顔もオレ好み。

魔族にも美女がいたんだ。


「魔王様の片腕に何かしてみろ、ただでは済まさん。」

おっと、良い情報を聞きました。


「あなた達に敵対するつもりはありません。」

「なら、今すぐこの鎖をほほどけ!」

手下は地面に倒れた状態で暴れてるが、ほどける訳なかろう。

体力消耗するだけだぞ。頭悪ぅ。


堂々たる態度のリーダーには確認しておかなければならないことがある。

「あなたは魔王の愛人ですか?それとも妻だったりします?」


「な!」

あ、赤面してる。どっちの意味?


「ふざけるな!魔王様が恋などする訳なかろう。」

手下が答えてくれた。

それ、うのみにするからな。


この女魔族、鎧(よろい)でなくドレス着させたら化けるぞ。


「鎖ほどいてあげるから、オレと2人で旅行しませんか?

 1人は寂しいのでお供してください。お願いします。」

「ふざけるな!するわけなかろう。」

お前らには聞いてない。


「いいわよ。」

お!言ちゃいましたね。

拘束を解除して欲しいための口実ならオレには通用しないぜ。


「もしオレを騙(だま)したら、こうなりますんでご注意を。」


♪ドーン、ドーン、ドーン

オレは小さな山を指さし、魔法で吹き飛ばして見せた。

そこの跡地は大きなクレータと化し、原型が分からないほどに。

魔族どもは目と口を大きく開けて驚愕してる。

驚かない方が不自然だろう。

どうだ、理解してもらえたかな?


「魔王様の宝物庫(ほうもつこ)が。」

「マジ?」

あ~あ、こりゃ人間との全面戦争だわ。

ーーー つづく ーーー

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