07 異世界食堂

♪カラン

「いらっしゃい!」


先月から異世界人がうちの洋食屋に訪れるようになった。

不思議なんだが、土曜の深夜2時~4時の間だけ

店の入り口が異世界とつながるのだいという。


こうやって店内を見渡すと、エルフやドワーフ、

竜人族など多種にわたった顔ぶれがここで食事をしている。

どうやら、つながる先は一ヵ所だけではないようだ。


店は、都内にある小さな洋食屋で、オレはそこのシェフ兼オーナーをしてる。

要するに買い出しから調理、経営の全てを1人でこなしてるということだ。


しかし不思議である。

どうしてこの店だけが異世界とつながるのだろうと。


「ここのカツカレーは最高だ。」

「確かに、だがハンバーグが1番だと思うぞ。

 肉の上にかかっているソース。なんとも言えん。」

「いや、ミートソーススパゲッティだ。

 この細長い糸のような食べ物。ここでしか味わえん。」


メニューは、どこの洋食屋にでもある有り触れたものだけれども、

異世界人にとっては見た目も味も新鮮なようだ。


「今日も美味しかった。」

「そりゃどうも。」


「支払いは、前回と同じでいいか?」

金貨のような物を出して来た。


「こんな高価なもの、本当にもらっていいのかい?」

「あぁ、拾ったものだ。

 ワシにはゴミだが、そんな物でいいならいくらでも拾って来るさ。」


異世界人の客は、宝石だったり、金貨のようなもを食事の代金として差し出して来る。

正直、額が釣り合ってない。もらいすぎだ。

価値というものは世界によって異なるものなのだなと痛感する。


ある日、オレは異世界人が支払ったものが、

どのくらいの価値があるのか興味が湧き、質屋へ持っててみた。

宝石だと思ってたものが、ただの石かも知れないし、金貨が価値のないかも知れない。

なんせ異世界人が持って来たものだ。

この世界に存在しない物質の可能性だって考えられる。


恐る恐る数点を鑑定に出した。

10分ほど待っただろか。

突然5名の警官が店内に押し寄せて来た。


「署までご同行願います。」


そしてその夜、次のニュースが全世界を駆け巡る。


♪先月、イギリス王室から盗まれた世界最古の金貨が都内某所で発見されました。


どうやら異世界とつながる扉はうちの店だけでなく、

王宮などにもつながっていたらしい。

ーーー 完 ーーー

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