第30話 ラストに向けてもうちょっと盛り上げたいわよねぇ……。


 その後龍也と悪そうな顔をした軍団は、駆けつけた警察に逮捕され、各所マスコミで大々的に取り上げられた。


 主犯の龍也は、ひき逃げ、誘拐、監禁、暴行未遂、傷害、更には薬物所持、使用の疑いなどの罪で当分の間顔を見る事はないだろう。


 また翔也だが、全身ボロボロの状態で救急搬送されたのと、俺達の証言で事件を止めようとしていた事が認められて罪に問われる事は無かった。


 しかし、そんな翔也が沙樹と同じ病院に入院する事になりさぁ大変!


 松葉杖を武器の様に操りながら、沙樹は連日翔也をいじめて遊んでいた。


 「痛いっ、痛いっすよ! 沙樹さん」

 「は? アンタに『沙樹』とか、呼ばれたくないしっ!」


 いい暇つぶしが出来たとばかりに翔也をオモチャにしていた。

 

 ※※※


 そして麻里は、小説を書く事よりもやりたい事が見つかったみたいだ。


 それは『絵本作家』だ!


 何でも子どもが生まれた時に読み聞かせる本を自分で作りたいそうだ。


 「『誰の子どもが欲しいんだ? ……勿論、この俺様のだよな?』」


 俺様ドSモードで迫ったら、


 「はぁん♡ 『あの声』でやるドSキャラ、何でこんなに相性がいいのっ!」


 「しゅっ、しゅきいぃっっ♡」



 ※※※



 そして月日は流れ、いよいよ『戦国戦隊武将ファイブ』の最終オーディションの日がやって来た。


 俺と蓮は勿論の事、ピンク枠を狙って、天と麻倉ともも参戦した。


 お互いアイドル声優同士、毎回役の取り合いになってる二人は、表向きは仲良くしてるが周りにバレバレな位、ライバル意識をむき出しにしていた。


 「あっ、先輩っ! 蓮さんっ!」


 天が駆け寄ってきた。


 「千秋楽の東京公演、見に来てくれてありがとうございましたぁ♪」


 俺達二人の間に割って入り、両方の腕を組んで仲良しアピールだ。


 「おはよー、バネくん、蓮くん! 明日は『双魂ラジオ』の収録だよー、また手作りのクッキー持ってくから、みんなで食べよー!(o・∇・o)」


 「手作りクッキーとか、……本当に自分で作ってるんですかぁ?」


 眉間にシワを寄せて怪しむ天に対し、


 「作るよー(o・∇・o) 簡単だから天ちゃんも作ればいーよー!」


 天が料理が苦手なのを知ってのこの返し。

 

 流石はアイドル声優! 表向きは笑顔のまま楽しくおしゃべりしているが、二人の周りからは『ゴゴゴゴー』と音が聞こえて来そうだった。


 そんな二人を苦笑いでやり過ごし、俺達は控室で順番を待っていた。


 「バネ太よー、何も『レッド』じゃなくてもいーじゃんか? 一緒にやるなら『ブラック』にしろよ!」


 「何それ? もう『レッド』は自分、みたいな言い方だな、オイ? お前の方こそ『ブルー』でいいじゃん!」


 「『あの声』戻って来ても、『声優アワード主演男優』のネームバリューには勝てないぜっ!」


 「まぁ、はどっちが選ばれても恨みっこ無し、で行こうぜ!」


 天とともちょに聞こえる様に言ったら

 

 「「何よー、その言い方っ!」」


 二人に睨まれてしまった。



 ※※※



 「はい、次の方〜」


 次々とブースに入っては出ての繰り返しでようやく俺の出番がやって来た。


 蓮は最初の方の順番で、次の仕事があるからと早々に出て行った。


 出て行く際に親指を立てられ、手応え充分と言った感じで笑顔で俺にプレッシャーを掛けて行った。


 「ウィードソール所属、赤羽亮太です。宜しくお願いします!」


 ブースの向こうには『清澄くん』でお世話になった浮間舟渡監督が俺を見て、


 『赤羽くん、『あの声』戻ったそうじゃないか! 良かった良かった。 あの時は本当申し訳ない!』


 ヘッドホンから聞こえて来たので、俺は会釈をして『あの声』を使ってセリフを読み出した。


 ブースの向こうの反応も良さそうだ。

 すると浮間監督から、


 『今度は、〇〇な感じでやってみてください』


 要望が入った!


 よし、イケるっ! こういう時は経験上高確率で役がもらえるハズ!



 他にも何パターンもの要望が入り、オーディションは終了した。


 「ありがとうございました!」



 ※※※

 


 『終わったらウチにおいでよー♡』

 『今日は手作りじゃなくて、出前頼むから!(๑>◡<๑)』


 麻里からLIMEが来ていたので、


 『終わった、これから向かうよ!』


 麻里の家に向かいながら、今日の事を思い出していた。


 今まで準備して、『あの声』も出る様になったし、やるだけの事はやった。

 好感触だったけど、蓮のあの感じも気になるよな……。


 まぁ、……あとは祈るのみだ!



 ※※※



 龍也の事件から一か月が経ち、沙樹が退院したのでみんなでお祝いをする事になった。


 社長が個室を予約してくれ、蓮に、麻里、天、何故か翔也まで……、

 

 「みんな、グラス持ったか?」

 社長が音頭を取り、


 「それじゃ、沙樹退院おめでとう!」


 「「「「「かんぱ〜い!」」」」」


 そして、案の定沙樹が食いついた。


 「てゆーか、何でコイツがここに居るのよっ?」


 翔也も腕を骨折しているが、足は幸いな事に無事だったので少し前に退院していた。


 そして声優の道は諦め、社長に勧められてウチの事務所でマネージャーをする事になったんだ。


 「社長もバネ太も蓮も、どーしてコイツに甘いワケっ? 納得いかないわっ!」


 プンスカ言いながら高そうな寿司ばかり食べている。


 「あねさん、一生ついて行きますんで、これからも宜しくお願いします!」


 ……翔也、オマエら入院中何があったんだ?

 「一生ついて来るとか、……バカじゃないの?」

 沙樹はチラチラと蓮を見ながら、


 「一生ついて行くのは、『この人』だけよ♡」

 そう言って蓮の腕に絡みついた。そして、蓮から驚きの発表が……、


 「みんな、聞いてくれ!」

 そう言って沙樹の肩を抱いて、


 「『武将ファイブ』のオーディションに受かったら、俺達、結婚します!」




 「「「「えぇ〜っっ!!」」」」




 そこまで言うって事は、……だよね?



 第31話につづく〜!



 ※※


 はい、蓮の自信満々発言が飛び出しましたが、浮間監督はバネ太をお気に入りです!


 どんな結末が待っているのでしょうか?

 もうすぐラストです、最後までお付き合いくださいませ♡


 「最後まで読むよ〜♪」

 「♡、★、フォローするよー!」

 「タワマン買ってあげるよー!!」

 「こんな事言うのもそろそろおわりだよー(o・∇・o)」



 ♪読んで頂きありがとうございました♪

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