第14話 なんかイヤなヤツ書くの、慣れてきたのよねぇ……。


 「みんなぁ〜、ちょっと来て〜っ!」



 翔也達の嫌がらせがあった翌日、相変わらず俺達四人はコンビニに集合していた。


 そんな中、イートインスペースに居る麻里が俺達を呼んだ。


 「コレ見てっ!」


 麻里はパソコンの画面を指差して、

 「昨日アイツが言ってた『双子の魂今どっち?』なんだけど、凄い炎上してるよっ!」


 「うわぁ、……コレは酷いわ」

 画面を覗き込んだ沙樹が思わず顔をしかめた。


 そこには、

 『双子の演技、どっちがどっちなのか区別つかない』

 『演技下手くそ過ぎて草』

 『ゴリ押し声優』

 『何で双子の声優、別々にしなかった?』

 『せっかく作画いいのに台無し』


 ほとんどが翔也の演技に対する批評だった。


 「そんなに酷いのかなぁ? みんなアイツの事、……キライなだけなんじゃないの?」


 麻里が言うので、みんなで第一話を見る事にした。


 「まぁ、……難しい役だからね、翔也も大変だったんじゃないかな?」


 「バネ太っ、何で翔也の事庇うの? アンタが一番酷い事されてるのよっ!」

 沙樹がプンスカ怒っている。


 「あっ、始まるよー!」



 ※※※



 「「「「…………」」」」



 「……ねぇ、同業者として、コレ……どうなの?」


 麻里が俺と天を交互に見ながら言った。


 「コレはちょっと……、ねぇ、……亮ちゃん?」

 「あ、あぁ……、ちょっと酷いな」


 「ホントにどっちがどっちだか分からないわ! ……よくコレでオッケー出たわね、もうっ、同じ事務所だったのが恥ずかしいわ、……アレで主演男優賞とか、バカなの、アイツ?」


 沙樹は頭を抱えてしまった。


 「あぁ〜、コレなら昨日言ってた勝負も負けないわよね、バネ太っ!」


 麻里はホッとした顔をしてビールを飲み干した。




 ※※※




 次の日

 俺は来週開催されるイベントの打ち合わせに来ていた。


 「よおっ! 久しぶりっ♪」


 東十条ひがしじゅうじょう れん

 二年連続で声優アワード主演男優賞を受賞している、今や名実ともにナンバーワン声優だ。


 蓮とは養成所時代からの付き合いで、気心が知れた仲だ。


 俺が『新しい声』でちょこちょこ活動を再開しだしたと言う噂を聞いて、蓮が声を掛けてくれた。


 今回のイベントは、蓮がやってるラジオ番組『東十条蓮のオ蓮トコ来ないか?』の公開生放送だ。


 内容はフリートークと、番組のコーナーを二人でやるといったよくあるヤツに今回は朗読劇をやる事になった。


 まぁ、付き合いも長いし俺達は息のあった掛け合いを見せ、何事もなくリハーサルは終了した。


 「いやぁ、翔也には困ったモンだよなぁ、バネ太」


 休憩時間に入り、苦笑いをしながら蓮が切り出した。


 蓮の事務所も、結構な被害を受けてるみたいだ。


 「まぁ、……俺は問題ないけどさぁ。アイツらが圧力かけてるせいで、後輩達に仕事が全然回って来ないんだよねー」


 ミネラルウォーターを口にして、


 「それで、……アレだろ? お前見た?」

 

 「あぁ、……確かに『アレ』は酷かったな」

 

 「ネットは炎上してるし、ありゃ事務所も対応出来ないだろ? アイツバカだからなぁ、……変な事にならないといーけどな」


 なんだかんだ言って蓮も翔也の事、気にかけてるんだな。


 「それはそうと、またお前がヤル気になってくれて嬉しいよ! もうさー、ヤメちゃうんじゃないかと思ってたからさー! コレで『あの声』まで戻って来たら俺の仕事減っちゃいそうだな、アハハハハっ!」


 蓮は俺の肩をバンバン叩いて嬉しそうに笑った。

 

 「だけど負けないぜ!『武将ファイブ』!『レッド』は俺が貰った!」


 親指を立ててウインクして来たので、


 「俺も、今の自分の最高を見せてやる!」


 俺達はガッチリと握手をして、お互いの健闘を称えあった。

 

 「終わったらメシでも食いに行こうぜ!」



 ※※※



 その頃、翔也は……、


 事務所でエゴサをしながら荒れ狂っていた。

 当たり前だが、どのSNSでも翔也の演技は酷評されていた。


 「チックショーっっ! 好き勝手書き込みやがって!」


 ソファーにふんぞり返り、両足をテーブルに投げ出した。


 事務所内に重苦しい雰囲気が漂い、マネージャー陣やスタッフ達は逃げる様にその場から姿を消した。


 残された翔也の取り巻きの後輩声優達も、目を逸らして気まずそうにしている。


 「そうかっ! 分かったぞ! ……みんな、最近俺の主演が多い事を妬んでるんだな! それでサクラを使ってこんな酷い事書かせて、俺をおとしいれようたって、そうはいかねーからなっ!」


 取り巻き達を睨みつけ、


 「オイッ、お前らっ! 手の空いてるヤツ全員集めて、SNSに俺を称賛するコメントを書かせろっ!」


 「……」


 後輩声優達が顔を見合わせていると、


 「いーから早くしろっ、ボケがっ!」


 その内の一人を蹴り上げて罵声を浴びせた。


 「ひいぃっっ!」


 「お前らどうせ仕事ないんだから、とっとと始めろっ! ……ホント使えねーな、オイッ!」


 翔也の機嫌は治まらず、その場にいた後輩声優達を次々に蹴り飛ばしていった。



 不穏な空気の中、第15話につづくのです。



 ※※


 桜蘭舞「ゴメンねぇ〜! イヤな終わり方しちゃって、せっかくの土曜日台無しだよねぇー(リアルタイムで読んでる人だと7月8日)」


 桜蘭舞「でもね、聞いて!」「明日の15話のタイトルはね……」


 第15話 このお話の神回は? って聞かれたら、……間違いなくこの回よねぇ



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 ♪読んで頂きありがとうございました♪

 

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