第11話

 保健室のお姉さんに手伝いを頼まれて、仕方なく保健室で備品の整理をした。


 と言っても、棚の中の物を別の棚に移すとか、そういうお手伝い。

 あれ?これくらいだったら、私の助けなんて必要無いんじゃ?って思ったけど、せっかく保健室まで来てしまった訳だし、黙々と役目をこなした。


「あの、終わりました」


 私は保健室のお姉さんにそう言って、近くの丸椅子に腰を下ろす。


「あら?もう終わったの?染谷そめやさんは仕事が早いわね。先生、とっても助かるわ♪」

「いや、まぁ………はい」


 ほんとは、物を移すだけの作業なんだから時間かからないよ、って言いたいけど褒められたことは素直に嬉しいから言わないでおく。


 私はそれから約15分くらい、ずっと丸椅子に座りながらボーっと保健室のお姉さんが片付けしているのを眺めていた。


 所詮、生徒が触っていいものなんて限られているらしく、やっぱり備品の整理の大半は先生が一人で行っていた。


 あの、私、もう教室に戻ってもいいかな?

 ちょっと、あの、そろそろほんとに眠たくなってきちゃってるし。


「あの、、先生、。私、もう戻っても―――」

「染谷さんごめんねー。もうすぐ終わるからねー」

「あ、はい」


 戻ってもいいかを聞こうとして、言葉を遮られてしまった。

 まぁ、意図して遮ったわけじゃあ無いだろうし。

 仕方ない、よね。

 それに、なんでか分からないけど、待っててって言われたから大人しく待つことにした。



 コクリ コクリ



 ………眠たい。

 今何時だろ?保健室にある時計を見ると、16時50分。もういつもなら仮眠をして夢にいる時間だ。

 どうりで、こんなに耐えられないほど眠たいわけだ。


 どうしよ。

 もうここまでくると、教室に戻るのも億劫に思えてくる。


 私は船を漕ぎながら、ふと目を擦り顔を上げると、が私の目に写った。


「(あ、そうだよ。保健室なんだから、ちょうど良いものがあるじゃん)」


 私はそれにトテトテと歩いて近づき、先生に許可も取らずにモゾモゾと入り込んだ。

 眠たくて、まともな思考回路を持たない今の私ならば、何をしても不思議ではない。


 私はそれに寝転んで、重たくなる瞼が閉じる前に、最後に見えた光景は――――




「ふふふ。♪♪おやすみなさい♡染谷 桃花ちゃん」


 保健室のお姉さんが意味深な笑みを浮かべている光景だった。


 ただ、この光景も、今の半無意識状態の私は、きっと覚えていられない、、、かな。

 私はで、深い眠りに落ちるのだった。

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