第10話
教室に戻ると、クラスメイト皆の視線が一斉に私に集まって、私は固まってしまった。
そりゃそうだよね。
二限目が終わるまで、朝からずっと教室にいなかった訳だし。
少しぐらい注目を浴びても仕方ない。
私は黙って、皆の視線から逃げるように足早に自分の席に着いた。
それから隣の席の笠井さんに「大丈夫?」と聞かれて、また私は顔を真っ赤っかにしちゃうハプニングもあったけど、なんとか三限目と四限目の授業を受けてお昼休みになった。
「桃花ちゃん、お昼ご飯一緒に食べない?」
「えっ?」
いつもは一人で食べてる笠井さんから急にそう言われてお誘いを受けたものだから、随分と頓狂な声が出てしまう。
「ど、どうして?」
「どうしてって………ふぁ〜、私が桃花ちゃんと食べたいからだよ」
笠井さんは私の質問に欠伸をしながらも答えてくれた。
笠井さんって、確かいつも菓子パン一つとかで昼食を済ませて、その後はいつもすぐに机に突っ伏して眠ってたよね。
今も欠伸をして、なんだか眠たそうだし。
大丈夫かな?
私、食べるの遅いから、笠井さんの睡眠時間を奪ってしまう。
そういうのってルーティンだと思うから。私も放課後はいつも眠ってるせいか、決まった時間に眠たくなっちゃうし。
………それに、やっぱり少し、笠井さんとは適度に距離を空けるべきだと、思う。
このままだと、いつか私は本当に笠井さん無しじゃダメな女の子になってしまいそうで、なんか怖い。
だから、
「ご、ごめんね」
「………あー、分かった。こっちこそごめんね!!―――そっかぁ。暗示が無いと、私と桃花ちゃんの心の距離ってこんなに離れてたんだ……」
「え、え?」
「あ、んーん!!なんでもない!それじゃあ、また気が向いたらで良いから、一緒に食べよ」
「う、うん!そ、その時には、わ、私から誘うよ」
「ほんとに!??」
なんだか笠井さんがとっても落ち込んでるように見えたから、私がそう言うと、笠井さんは表情をコロッと変えてペカーっと笑顔になった。
ズズイと距離が縮まる。
は、恥ずかしい。
「ほ、ほんとほんと」
「約束だからね!!」
「うん」
そうして、私と笠井さんはお昼ご飯を別々で食べた。
◇ ◇ ◇
放課後になった。
今日も今日とて、私は誰もいなくなった教室で一人、机に突っ伏して眠ろうとする。
お昼休みの時にも思ったことだけど、こういうのってルーティンだから。
やっぱりどうしても、すぐに眠たくなってきてしまう。
私がウトウトと夢の世界に旅立とうとしていると、
「あら?明かりも灯けないで、誰かしら?」
つい最近、どこかで聞いたばかりの声が私の耳に届いた。
顔を上げると、
「ほ、保健室のお姉さん?」
「えぇ、そうよ。覚えててくれて嬉しいわ」
そう言って保健室のお姉さんはニコリと笑った。
そ、そりゃあ、今日のことだし。
忘れるわけないよ。こんなに美人な人のこと。
でも、どうして保健室のお姉さんが教室に?
てっきり、その、来るとしても、笠井さんかと思ってた。
笠井さんにだったら、まぁ、寝顔ぐらいだったら見られても良いかな?って最近は思ってるけど。
ほ、保健室のお姉さんにはまだ嫌だな。恥ずかしい。
「ちょうど良かったわ。ちょっと保健室まで来てくれる?」
「え、えぇ?」
「手伝ってほしいことがあるの♪」
もう、眠たいんだけどなぁ。
とか
今日は笠井さん来ないのかなぁ。来た時に私がいなかったら、帰っちゃうのかなぁ。
とか
そんなことを思ったけど、一応、先生に頼まれたら断れない。
「わ、わかりました」
私は欠伸を噛み殺して、保健室のお姉さんの後ろを着いて行った。
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