第5話
「もうすぐで完全下校時刻だし、一緒に帰らない?」
私が笠井さんから渡された折りたたみ式手鏡に映る自身の顔に驚いていると、
確かに、教室の時計を見てみると時刻は17時35分。完全下校時刻が18時だから、今から二度寝っていう時間じゃない。
そ、それに。
笠井さんが目の前にいると、何故だか心臓がうるさくて、眠れそうにないし。
「わ、わかった。い、いい、一緒に帰ろ」
私は吃りながらもそう返した。
それにしても………
ほんとに私はいったい、どんな夢を見てたんだろう??
どんな夢を見たら、あんな恥ずかしい顔になっちゃうんだろう。
分からないや。
私は笠井さんと一緒に教室を出た。
笠井さんは私の前を、一歩分ぐらい前を歩く。
??
そんな笠井さんに、私は疑問に思った。
なんだろう?
自分が何に疑問を持っているのか分からない。
けれど何処か違和感を覚えた。
自然と視線が、前を歩く笠井さんの手にいく。
どうして、こんなに笠井さんの手が気になるの??
分からない。
分からないけれど………
「か、笠井さん!」
「えっ?びっくりした。どうしたの?」
私は困惑したまま、前を歩く笠井さんの制服のスカートを摘んで、引き止めていた。
「な、なな、何か、忘れてること、ない?」
ダメ元で聞いてみた。
自分が分かっていないことが、彼女に分かるはずもないのに。
だけど、どこか不安げに。それでも期待している自分がいる。
「わ、忘れてること?」
「(じーーーーーっ)」
「………あ」
「???」
笠井さんは何か気づいたみたい。
凄い、笠井さん。
もしかして、私よりも私のことを分かってくれてるのかな?なんか嬉しい。
多大な幸福感に包まれる。
笠井さんは私から顔を逸らし、何やらボソボソと独り言を言っていた。
「え?う、うそ。も、もしかして、暗示が効いてる!?せ、洗脳、できそうな、感じなのかな!??もしかして、さっき桃花ちゃんが寝起き幸せそうな顔してたのって、私の暗示と関係ある!????今だって、この物欲しそうな顔。多分、あれを求めるん、だよね????」
何を言ってるのかまでは聞き取れない。
それに、独り言を盗み聞きするのって、笠井さんに失礼だよね。
笠井さんに嫌われたらいやだし。
笠井さんは独り言を終えると、こちらに私がさっきから気になる手を差し出してきた。
「も、桃花ちゃん」
「?」
「あのー、違ってたらごめんね」
「うん」
「手、繋ぐ?」
「!!!」パァ
これだ!!
今、私の違和感というかモヤモヤが晴れた。
私は、笠井さんと手を繋ぎたかったんだ。
だって、当たり前のことだし。
ギュ
私はすぐさま黙って笠井さんの手を握った。
ニギニギ
「えへへ」
自然と笑みがこぼれる。
私、どうして笠井さんと手を繋ぎたかったのかな??
いや、当たり前のことだから疑問に思うのもおかしいよね。
でも、当たり前のことなのに。
どうしてこんなに嬉しいんだろう。
分からない。
何がなんだかよく分からないけど。
ニギニギ。
ニギニギ。
幸せだし、まぁ、良いよね♪♪
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レビュー嬉しい。
これからも応援よろしくです(∩´∀`@)⊃
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