【短歌連作】もちろん君が一番いい

とろり。

もちろん君が一番いい


校舎裏こうしゃうら告白しても恋人になってくれずに背を向ける彼


走り出す君はどこへ行くのかと見かけた僕はあとを追いかけ


公園で足を止めてうつむいて肩を揺らして泣き出した


うつむいて泣いてる君に降り注ぐ雨はしだいに激しく強く


こんな時出来る男は傘をさし相合い傘で帰るだろう


傘が無い君を守る手段が無い君の隣に立ち尽くすだけ


夕立が過ぎ去ったあとも二人きり君は自分の足もとを見る


雲間から光が射して顔あげて隣の僕に驚いて


「驚いた ずっと隣で 濡れてたの?」 微笑んでわらって僕は頷いた


「バカじゃない? 風邪引くよ」なんて言うものだから「君もだよ」って言い返す


笑い合う二人をそっと包むように夕焼け空が輝いて


「振られたの?」「まあ、その通り」「残念だ」「本当に?」「本当さ」


目を逸らし想いが声にならないで少し勇気が足らなくて


「今日こそが……」心の中でつぶやいて僕はようやくふっ切れて


「好きなんだ! 付き合って欲しい! 本当に!」振られるって分かっているのに


時が過ぎ君の病に気がついて 君は足を失って


無理なのか君と二人で歩む道 手を繋いで歩む道


かまわない僕が君の足になる だから君は笑っていて


泣くよりも君の笑顔が見たいから君の隣に寄り添って


「ありがとう こんな私で いいですか?」「もちろん君が一番いい」


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【短歌連作】もちろん君が一番いい とろり。 @towanosakura

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