学生時代の二人

特別話 バレンタイン

2月10日。4日後にはとあるイベントが行われる。

そう。バレンタインだ!!

男子が女子からチョコを貰う。それが一般的だ。だがしかし、今の俺は違う。

俺は、自分の気持ちをしっかり伝えるために姫乃に男子からチョコをあげる。

ちゃんと本命。誤魔化して義理チョコだなんて言わない。なぜならもう、付き合っているのだから。


俺はこんなバレンタインを想像している。


…(裕介の頭の中)…


『ひ、姫乃!』

『ん?どうしたの?』

『その…男から渡すの変かもしれないけど、でもこれ!はい!本命チョコ!』

『え…!嬉しい!実はね、私も裕介のためにチョコつくってきたんだ。はいどうぞ。これをもらえるのは、裕介だ・け・だ・よ?大好きだよ、裕介。』

『俺も大好きだよ』



「なにが大好きだって?」


突然晴彦が俺の前に現れた。くっそぉ。一瞬で俺の世界がぶっ壊された。


「別にお前には関係ねえよ。」

「何お前。絶対木下さんとのバレンタインを妄想してひとりにやにやしてたじゃん。」

「バレてたのか?!」

「うん。だって、ずっと、えへへ、あはは、だいしゅきぃ、とか言ってたんだぞ。」

「最後のは流石に盛っただろ。」

「まあ、実際のところは盛ったけどそれぐらいぜ?」


あれなのかなぁ。俺、姫乃と付き合えて浮かれてんのかな?で、でも仕方ないだろ?!大好きな人と付き合えたらそりゃ浮かれるだろってばよ。


…って、


「ひどかったは流石にねえだろ!!!」

「時差すご。」


とにかく、リミットは残り丸々3日だ。その間に、チョコの買い出し、ラッピング、ラブレターを用意しないと。


「えへ。えへへへ」

「うわぁ、ここまで顔に出る人は初めて見たな。幸せそう通り越してキモいな。」

「んふふ、姫乃ぉ〜。」

「おーい裕介さーん聞こえてますかーAED持ってきましょうかー」

「え?なんでAED?」

「お前なんかキモいし、意識ぶっ飛んでんもん。」

「それはすまん。あ、チョコは何がいいかな?ラッピングは可愛い系?それとも清楚系?ラブレターはあまりかしこまらないほうがいい?」

「女は普通のチョコが好きらしいけどな。ラッピングは木下さんに合うような柄とかデザイン選べばいいんじゃね。ラブレターってお前…もう付き合ってんだろうがよ。」


ラブレターを付き合った後でも渡してはいけない、ということか?そんなの俺の勝手なんじゃないか?


「まあとにかく。お前のことだから好きにしろとしか言わないけどあんまり羽目外しすぎるなよ?かえってだせえからよ。」

「わーってる。その代わり、お前は応援しろよ?」

「はあ…わーったよ。」



・・・一方姫乃は?というと・・・


「姫乃はもちろん、彼氏にチョコ作るんだよね?」

「姫乃ってお菓子作り得意だから当然作るよね??」

「「ねえ、どうなの?」」


友達にものすごく質問攻めをされていたのであった。


「ま、まあ作らないって言ったら嘘になるけど…」

「はあ。ラブラブよねほんと。私もあんな彼氏ほしー」


姫乃は、友達があーだこーだ言っている隙に教室を抜け出し、廊下へと出た。

すると、噂をすれば裕介がいたのである。


「あ、姫乃!」

「あ、ああ裕介」

「なんか慌ててたっぽいけどなんかあったか?」

「え?う、ううん!なんでもないよ!」

「?まあ、それならよかった!じゃあな!」

「ばいばい!」


姫乃は、あんな迷惑そうな感じを出していたが、姫乃も裕介と同じくらいバレンタインに燃えている。


(ザクザク系もいいけど、サクサクしたクッキー系を攻めても良さそうだよね…)


「あ゙ぁ゙悩むぅ…!!!」


誰にもバレないように静かかつ、顔はうるさく、で叫んでみた。


帰り道、結局私はザクザククッキーにした。



*****


2月14日。バレンタイン当日。女子生徒らは、かなりそわそわしている。きっと、好きな男子にチョコレートをあげるんだろうなぁ。


(姫乃からもらえるかな)(裕介からもらえたりなんてこと…)


姫乃と裕介も、ソワソワしていた。二人は同じクラスにいるが、お互いをチラチラ見るだけで、話そうとはしない。傍から見れば、喧嘩をしてしまって話しかけづらい二人、だ。だが、現実はそうじゃない。めちゃくちゃに二人は緊張しているだけ。


「ね、ねえねえ姫乃?彼氏と喧嘩でもした?」


「なあ、裕介?木下さんと…なんかあった?」


友人の言葉さえも二人の頭の中には巡らない。友人も友人で、何故かソワソワしている。


〜〜放課後〜〜


(どうやってバレンタイン渡せばいいのかな…)

(姫乃にどうやってバレンタインあげればいいんだ…?)


全然積極的ではないふたりに呆れた友人らは、「屋上に行け!」「やっぱ屋上でしょ?」と言った。


その友人らのアドバイスにより、二人は屋上へ行くこととなった。


(まだかな…)(まだかな。)


おいふたりとも!!なんで同じ屋上にいるのにお互い気が付かないんだ!!!


「裕介…」

「…?姫乃?」


あーやっと気づいた。


「偶然だね。」

「そ、そうだね。」


あーあ。ふたりとも黙っちゃったよ。


「あ、あのさ!」


お、男前な裕介!ついに彼女に愛の告白か?!


「その…男の俺から言うの少し変かもしれないんだけどさ、姫乃にバレンタインつくってきたんだ。よかったら食べてよ。感想聞きたい。」

「私も裕介につくってきたの。」

「じゃあ一緒に食べようか。」

「そうだね。」


二人は屋上のベンチに座りながら咀嚼する。


「え、うま!」

「おいしい!」

「姫乃ってやっぱ天才だな。」

「裕介こそ、いつもはあんななのにこういうときだけはりきっちゃって〜」

「ば、ばか!好きな人には気合が入るもんだろ。」

「まあ、そうよね。」

「姫乃。これからもよろしくな。」

「うん。私もよろしくね。」


((あぁ…ふたりとも良かったなぁ))


心配だからこっそり屋上の隠れ家から姫乃達を見ていた、姫乃たちの友人なのであった。

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幼馴染のアイツ 凪@執筆休息中 @_harunohi_143

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