せめてやさしいお別れを

のと

せめてやさしいお別れを


「逝かないで」その五文字さえ声に出ず 供えてほしい花の名を訊く


さよならに代わる言葉を探してる いつか必ず君へ贈るよ


花束を抱えて歩く海岸線 渡す相手のいない世界で


ねえ僕は失うことで付加される強さも深みもいらないんだよ


不器用を笑うあなたがいなくなり私は料理が上手になった


「冬までに星になるの」と笑う君 止めたい僕は偽善者ですか


かつて見た未来の分だけ傷ついてIじゃなくてさWeと言ってよ


自分のと言えずきれいにつつまれたラッピング紙をそっとはがす夜


床で起き 空の酒瓶 朽ちた紅 嗜み過ぎたとひとり苦笑す


如月とピアノの上に青が降る 夢で逢えたら昔話を


卒業だ 君の薦めた短歌集 僕が作者と言えないままで


頼らずに生きることにも慣れてきた ラックも一人で組み立てられる


星月夜 言葉のお守り温めて 捨てずにいます 雨が降るから


助手席に乗せたい人はまだ遠く 3連プリンが僕の恋人


路地裏に生活音と香り立つ 母のカレーを思い出す夏


ここにもうジャングルジムの影もなく 僕だけ缶を蹴り続けてる


ときめかぬものは捨てるが良いと聞き何も残らぬ六畳一間


永遠にすれ違えない夜がある 今もあなたは奈落の光り


午前二時  喪失ばかり拡がって 君が遺したマルボロを吸う


夜を越えせめてやさしいお別れを またねで終わる君が好きです


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